イベント屋外の曇り空には、実はたくさんのシャッターチャンスが隠されています。今回は「蛍火虫(ホタル)」イベントの屋外エリアにて、小雨が降った後の曇り空を活かし、1灯ライティングによるローキー(暗調)撮影に挑戦しました。全カットを通して使用したのはAD200(モノブロックストロボ)のベアバルブ1灯のみで、光源を斜め後ろの高い位置から下に向けて照射しています。曇り気味の天気特有のディフューズ(拡散)環境は非常に優秀で、モデルの顔にとても柔らかい光を届けてくれます。晴天の時のようにハイライトが白飛びしたり、影がキツくなったりする心配がほとんどないため、顔へのライティングが非常にスムーズになります。ただ、ここで一つ注意が必要なのは、芝生や草むらの近くで撮影すると、環境光の反射によって広範囲の「緑色」が画面に入り込み、モデルの肌が黄緑色に濁って見えてしまう点です。そのため、現像・レタッチの第一歩として、この「草の照り返し」による肌の濁りを自然な白い美肌へと引き戻す必要があり、環境色の補正にはかなりの時間を割きました。
レタッチに関しては、細かな調整を「山ほど」施していますが、屋外ならではのリアルな空気感を極力残すように意識しました。スタジオ撮影のような完璧で非の打ち所がない仕上がりを求める人も多いですが、私は屋外の生活感や「その瞬間にそこで起きている」リアリティを大切にしたいと考えています。微風に揺れる髪の毛、背景にうっすらと写り込むイベント会場の建物、さらにはテーブルの上の反射。これらは後から素材サイトから持ってくることのできない貴重な財産です。今回のダークトーンの作品群には、輪郭部分にあえて赤と青の色収差(カラーフリンジ)エフェクトを加え、光と影のコントラストと組み合わせることで、二次元の壁を突き破るような幻想的な雰囲気を演出しました。写真にある落ち葉や反射の要素は、実は偶然の産物で、黒い反射テーブルが良い仕事をしてくれました。ポージングの指示の際、私はモデルにあえてカメラを見ず、テーブルに写る自分自身を見つめるように伝えました。この「自己を凝視する」ような視線とリラックスした身体の動きは、カメラを直視するよりもはるかに生き生きとしており、キャラクターである「長夜月」が持つ、落ち着いた静かな雰囲気を引き出すことができました。
この写真たちの魅力は、その「リアルさ」にあります。コスプレイヤーとして衣装を着てイベント屋外を歩き回る、そのプロセス自体が素晴らしい体験です。ストロボを1灯持ち込み、屋外の天気と環境を上手く活かすだけで、これほど質感のある写真が撮れます。何から何まで整ったスタジオ撮影に比べ、ストーリー性と温かみを感じられるこのような屋外スナップの方が、撮影の思い出としてより深く心に残ります。良い写真というのは、場所の豪華さではなく、光と影、そして感情をいかに捉えるかで決まります。今回のローキー撮影への挑戦は、イベントの屋外撮影において、かなり良い成果を出せたのではないかと思っています。