今回の撮影は、夕暮れから夜へと移ろうわずかな「ブルーアワー」の瞬間を狙い、開放的な屋上駐車場を舞台に敢行しました。雨の日ならではの澄んだ透明感を表現するため、衣装には王道のセーラー服タイプのJK制服を選び、白のハイソックスと黒のローファーをコーディネート。小道具として長柄の透明な傘をふんだんに用意しました。雨夜の物憂げな情緒に寄り添うため、全体を寒色系の落ち着いたトーンで統一。機材にはSony A7M4に50mm F1.2レンズを装着して臨みました。光量が限られた暗所において大口径レンズの威力は絶大で、暗がりでもシャッタースピードを稼いで雨粒を美しく静止させられるだけでなく、濡れた路面の照り返しをとろけるような玉ボケへと昇華してくれます。
当日は雨足が強まったり弱まったりと目まぐるしく変化し、ライティングには細心の注意を払いました。ロケ用のストロボとソフトボックスを持ち込み、斜め前方から光を回すことで、肌の透明感を美しく保ちながら、傘の表面についた無数の水滴をキラキラと輝かせました。ブルーアワーの魔法のような時間は極めて短く、空の深い群青と街灯の温かな橙色が織りなす絶妙な明暗のコントラストの中、私たちは時間と競い合うようにシャッターを切り続けました。画面に奥行きを持たせるため、地面に無造作に置いた幾本もの透明な傘を前ボケとして活かし、視線を自然と中央の人物へと導く構図を組み立てました。
水たまりが広がる屋上に立ち、傘を打つ雨音を聞いていると、吹き抜ける夜風に肌寒さを覚えました。しかし透明な傘には周囲の環境光と水滴の乱反射を美しく溶け込ませる不思議な魅力があり、傘の柄を少し回すだけで、光が水膜の上を滑るように優しく揺らめきます。カメラの前では過度な力を抜き、ふと振り返ったり、空を静かに見上げたり、足元の水たまりに映る自分を見つめたりと、心の赴くままに佇みました。髪先から滴る雫、夜風に揺れるプリーツスカートなど、晴れの日には決して切り取れないしっとりとした静寂と切なさが漂います。人の視野に近い50mmの画角だからこそ、カメラマンさんがこまめに立ち位置を変えて多彩な構図を探り、私の感情を静かな脱力状態へと導いてくれました。作り込んだポーズに頼らず、雨夜の空気の中に佇む自然体の息づかいを切り取った、雨の日の撮影の醍醐味を感じられる忘れられない作品となりました。