ピンクのジャージのジッパーを上まで上げ、ずっしりと重いギターケースを肩にかける。本日のロケ撮影のミッションは、後藤ひとりが放課後に見せるあのどこか居心地悪そうで落ち着かない空気感を表現することでした。その情緒に寄り添うため、ロケ地には北京オリンピック森林公園北園を選定。並木道を歩きながら内心はずっとドキドキしていました。もともと内向的な性格の自分にとって、屋外でこの格好をして歩くこと自体がひとつの大きな挑戦だったからです。
最初のカットは遊歩道で撮影しました。手に持ったぼっちちゃん愛飲のドリンクは、この日のために用意したこだわりの小道具です。こうした日常の細やかな小物はキャラクターの心境へと没入する大きな助けとなり、ボトルを掲げながら彼女の頭の中で繰り広げられる怒涛のモノローグを反芻していました。その後、公園のベンチに座ってギターケースをぎゅっと抱きかかえると、「誰にも見つかりたくない、静かに物陰へ縮こまりたい」という衝動が自然と込み上げてきました。三色団子を手にしたときは、甘いものを口にしておどおどしながらも胸の奥でちょっぴり嬉しさを滲ませる彼女の姿を想像していました。
撮影機材について少し触れると、カメラマンさんはニコンZ9にタムロン35-150mm f/2-2.8 Zのレンズを使用してくれました。望遠域は屋外ロケで本当に扱いやすく、150mm端の圧縮効果によって背景の雑多な木々や散歩の人々を美しく滑らかにボケさせ、自分を周囲の景色から綺麗に浮かび上がらせてくれました。公園内の木造の山小屋も静謐な雰囲気を添えてくれました。当日は柔らかで穏やかな自然光が顔に落ち、開放絞りのボケ味と黒ストッキングにローファーの足元が相まって、画面全体のトーンが美しく調和しました。
実際の撮影は決して順風満帆だったわけではありません。公園を行き交う人々から時折向けられる好奇の視線に、最初のうちは手のひらに汗を握り、手をどこに置けばいいかも分からず身体がガチガチになっていました。けれど公園のベンチに腰を下ろし、ギターケースのストラップを俯いて直したり、団子を見つめてぼーっと物思いに耽ったりするうちに、次第に周囲の視線が気にならなくなり、彼女の内面世界へと深く沈み込んでいきました。彼女は重度のコミュ障ですが、その胸中には豊かな独白と自分だけの温かな世界を持っています。服の裾をぎゅっと握りしめたり視線を泳がせたりする細かな所作を通じて、外の世界に向き合う際の緊張と混ざり合いたいという葛藤を表現しようと試みました。
本日の舞台は主に木製ベンチと木漏れ日の小道でした。グレーブルーのプリーツスカートとピンクのジャージの鮮やかな色彩対比が、豊かな緑の背景の中で際立ちます。コミュ障を乗り越えようとする一面を描くため、レンズと視線を交わす瞬間にも挑戦しました。瞳にはまだ微かな怯えが残っているものの、最初の硬さに比べればずっと自然な表情を宿すことができました。放課後にギターを背負い、誰もいない静かな片隅で自分だけの世界を愛おしむ、そんな情緒をこの写真から感じ取っていただければ嬉しいです。
後藤ひとりという存在を読み解く鍵は、何よりも身体言語のディテールにあります。歩くときは胸をすぼめて猫背になり、肩を内側に入れ、両手はいつも所在なさげに彷徨う。そのため立ちポーズの撮影では重心をぐっと低く落とし、背中をわずかに丸めることで、自信のなさからくる独特のフォルムを意識しました。ワンサイズ大きめのピンクのジャージをダボッと羽織ることで「自分を隠したい」という心理を投影。膝上丈のプリーツスカートに黒ストッキング(ハイソックス)とビットローファーを合わせたスクールテイストに、大きな黒のギターケースが加わることで完成度の高いスタイリングに仕上がりました。巨大なケースは視覚的に画面を引き締め、彼女の華奢な頼りなさを際立たせてくれます。愛飲ドリンクや三色団子は、緊張しがちな自分を役へと引き戻してくれる大切なお守りでした。カメラマンさんも優しく肩の力を抜くよう導いてくれ、遊歩道での立ち姿から公園のベンチに腰掛けた全身カットまで多彩なアングルを撮影。ベンチの脇に置いた黒いギターケースは静かな防壁のように寄り添い、内面の不安を優しく和らげてくれました。これこそがキャラクターが授けてくれた勇気であり、現実の世界であっても彼女の殻を借りることで前を向き、このかけがえのない一日を写真として刻むことができました。