今回のホタルACGエキスポ(Firefly ACG Expo)での撮影では、この巨大な黒い翼を持ち込むことがかなりの挑戦でした。撮影前の一番の懸念は、混雑したイベント会場で全身黒のスタイリングが立体感を失ってしまうことでした。特に翼のボリュームが大きいため、強い光を当てると単なる「黒ベタ」になりやすく、ライティングの設計がこの作品の成否を分けるキーとなりました。
現場では金貝(Jinbei)のライティングシステムを一式使用しました。メインライトにはHD250maxに80cmのオクタソフトボックスを組み合わせ、柔らかく広範囲な光を供給することで、ピンクのウィッグの透明感ある質感と肌色を優しく表現し、顔全体を均一に照らしました。サイドリアにはHD100のベアバルブを配置してダイレクトストロボ発光させ、この光によって背後の巨大な黒い翼に美しい輪郭光(リムライト)を生み出しました。羽の一枚一枚の縁に影とハイライトが交差し、極めて立体的な視覚効果を演出しています。さらに床面に置いたHi500proのアンダーライティングがこの作品の決め手となりました。ローアングルからの光が脚部を照らし、黒のストッキングに美しい光沢感を与えつつ、ふくらはぎから足首までのラインを流麗に見せ、黒のリボンハイヒールと相まって視覚的なスタイルを見事に引き伸ばしてくれました。
機材面ではソニーA7M4ボディに金貝Q7III(ソニー用)コマンダーを使用し、撮って出しの色彩自体に高い質感がありました。レタッチ段階では、冷色系のグレーを基調とした環境感を維持しつつ、ピンクの髪色と黒い衣装の対比を少し強調しました。会場の大きな青いガラス窓から差し込む冷涼な光とストロボの人工光が交錯し、温冷の光源がぶつかり合うことで画面の色情報がより豊かになりました。
衣装について、このダークゴシック風(Dark Gothic style)スタイリングは細部のディテールが実に豊富です。胸元の透け感のあるレースとレザーの切り替え、黒のチョーカーや肘上グローブなど、あらゆる要素がキャラクターのミステリアスな雰囲気に寄り添っています。背中の翼には最もこだわり、多層のフォーム材をカットして重ね合わせ、表面には反射を抑えるマット塗料をスプレーしました。これにより、直射のストロボ光を浴びても余計な反射が生じず、深みのある質感をキープできます。
ポーズの設計においてもカメラマンと入念に連携を取りました。特に座りポーズのカットでは、重い翼を自然に垂らしつつスカートの裾を押し潰さない工夫が必要でした。白い折りたたみスツールの上で重心を何度も微調整し、最終的に非常に満足のいく仕上がりとなりました。特に両脚を自然に交差させてカメラ方向に伸ばしたアングルと、下からの補光が組み合わさることで、ダークゴシック風特有の妖艶さとエレガンスを余すところなく表現できました。
アニメイベント会場の人混みの中、このような大型装備を持ち込んで移動するのは体力的にも過酷で、搬入時は本当に重く途中で解体したくなるほどでしたが、こうした環境下でチームと共に素晴らしい光影の瞬間を捉えられたことは非常にエキサイティングな体験でした。今回の二次元撮影(Anime-style photography)およびイベント撮影(Convention photography)は、単なるキャラクターの外見再現にとどまらず、ダークな世界観の雰囲気作りにおける映像的な実験でもありました。ライティング、衣装からレタッチの配色に至るまで一貫性と克己心を意識した、近年のイベント創作の中でも非常に達成感のある試みとなりました。