去年の梅雨の時期、湿り気を帯びた空気の中でこのレゼ コスプレの撮影を終えました。実に奇妙な巡り合わせで、『チェンソーマン レゼ篇』の劇場版アニメ化が発表された今、ずっと温めていたこの写真をこうして公開できることが、特別な記念のように感じられます。
撮影日はあえて快晴の日を選ばず、午後から深夜にかけて降り続く雨模様の日を選びました。この低彩度のグレーのトーンは、現実の境界線を漂うような彼女の持つ独特な雰囲気に自然とマッチしてくれます。
今回のロケーション選びは、日常生活の中に存在する具体的な一角ばかりです。コインランドリー内では、乾燥機の温かい光と暗めの室内環境が冷暖の対比を生み出しています。カメラが捉えた瞬間、マシンに体を預けボーッとした表情を見せることで、日常感と離脱感が演技を必要とせず自然と溢れ出します。洗面所の鏡越しに映るショットでは、大口径単焦点レンズをメインに使用し、鏡前灯をメイン光源としてチョーカーやリボンタイを整える動作をスナップ撮影することで、盗み見ているようなリアルな生活感を画面に添えました。
街角の自動販売機でのシーンでは、自販機自体の冷たい白色光で顔立ちやボディラインを照らし出し、背後の暗闇を背景にして深夜の街を一人歩く孤独な雰囲気を演出しました。そして屋外の階段や緑豊かな花壇の脇でのショットは、全撮影の中でも最も情緒的な表現に特化した部分です。環境の微小な光を利用して体のシルエットを浮き彫りにし、ダークトーンの植物の壁の前で、赤紫のウィッグとピンクの花々がどこか妖しく調和しています。
衣装のスタイリングについて、レゼのこの一見シンプルなノースリーブ白シャツは、実はカッティングと質感の要求が非常に高い一着です。黒いロングリボンタイと金属リング付きのレザーチョーカーをあわせることで、視線が自然と上へと誘導されます。黒のショートパンツにニーハイの黒タイツ コーデとローファーの組み合わせは、下半身のスタイルを良く見せるだけでなく、この写真集のクールでどこかアンニュイな空気に完璧にマッチします。ウィッグはあえて崩したラフな低めお団子ポーズにし、前髪も通常のキャラクターより少し乱れさせることで、風に吹かれたり雨に濡れたような「湿り気」を表現しました。撮影中はシャツのシワを防ぐため、数カット撮るたびに襟元を整え直すなど、かなりの根気が求められました。
レゼというキャラクターを単一の感情で表現することはいつだって困難です。冷淡さ、優しさ、迷い、そして最後の決意が同時に同居しており、この多面性をカメラの前で掴むのは容易ではありません。カメラマン様は自然光と環境光を引き算として上手く使い、映像言語を通じて内面を補完してくれました。去年のこれらの写真を見返すと、当時の静寂な空気感が今でも画面越しに伝わってきます。複雑な小道具に頼らず、衣装、ロケーション、表情、探して光と影だけで彼女の世界を構築することこそが、私にとって『チェンソーマン』原作の雰囲気に最も寄り添う表現方法なのだと実感しています。