今回のエウリュディケのビジュアル構想は、最初のアイデア出しから完成写真に至るまで約半月の時間をかけました。『Identity V 第五人格』の彼女を選んだ時から、夢と追憶が織りなすあの朧げな質感をどのように具現化し、現実から遊離しながらも深い情愛の絆を感じさせる画面を作るかをずっと模索し続けました。
まずはウィッグとメイクの作り込みについて。エウリュディケ特有のオレンジがかった赤髪を再現するため、自然なグラデーションのロングウェーブを厳選し、前髪を美しく揃ったぱっつんに切り揃えるのに長い時間を費やしました。根元に暗めのトーンを仕込むことで、ライティングの下でも地毛のように自然な立体感をキープ。設定にあるエメラルドグリーンの瞳に合わせ、発色の良い鮮やかなグリーンのカラコンを装着しました。キャラクターの持つ儚げで浮世離れした空気を際立たせるため、目の下にピンク系のチークを広めにぼかし、白いハイライトでそばかすや光の粒のようなニュアンスをプラス。スタジオ全体が純白の空間だったため、顔立ちのコントラストを強めにしておかないと強い光で陰影が飛んでしまう恐れがあり、シェーディングやアイシャドウのグラデーションをしっかり深めに入れて顔の立体感を際立たせました。
衣装には淡いイエローのオフショルダー・パニエドレスをセレクト。幾重にも重なるフリルやレースがカメラの前で贅沢なボリューム感を生み出し、淡い黄色が純白よりも素肌のぬくもりを美しく引き立ててくれます。頭元を彩るアクセサリーはハンドメイドの花冠で、ピンクの花とグリーンの葉の組み合わせが、白一色の空間に瑞々しい息吹をもたらしてくれました。小道具には純潔を象徴する白いヒナギクの花束と、幼心と愛着を物語るブラウンのテディベアを用意しました。
ロケ地にはアイアンベッド、円柱、そして無数の白いドレープ紗幕を備えたヨーロピアン調の白ホリスタジオを採用。柔らかなソフトボックスとレフ板を組み合わせたハイキー撮影を軸に、明暗のコントラスト比を極めて小さくコントロールしました。幻想的な雰囲気を高めるため、斜めからの逆光で輪郭に光の滲みを作り、レンズの直前に薄いオーガンジーをかざして柔らかなフォグ効果を実写で演出。胸元で手を組む姿、そっと唇に指を当てる仕草、花束を抱きしめるポーズ、クマを抱く姿など、彼女の静寂と待ち続ける横顔を丁寧に紡ぎ出しました。
今回の撮影における感情の核にあったのは、「エウリュディケとオルフェウスが二度と離ればなれになりませんように」という祈りでした。腰を下ろして物思いに耽るカットやレンズをじっと見つめる瞬間、運命の無情さに抗えない無力感と、それでも手放せないかすかな希望の交錯を心の中で思い描いていました。夢想の要素に満ちたセットでありながら、写真の余白を見つめるとどこか切ない記憶の哀愁が漂います。夢なのか記憶なのかと尋ねられますが、その両方が溶け合っているのだと思います。
撮影中はその情緒を途切れさせないよう、哀愁を帯びたピアノの旋律を繰り返し聴き続けました。写真は光と影で描く絵画であり、コスプレは自らの魂を注ぎ込んで二次元のキャラクターを満たす営みです。初めて挑むキャラクターだったからこそ、テストメイクや衣装の仕立てには細心の注意を払いました。特にウィッグは毛束の一筋一筋にヘアワックスを馴染ませて自然な弧を作り、ふんわりとしたボリュームと美しい落ち感を両立させました。強烈なスタジオ照明の下、重いドレスを纏いながら軽やかな仕草を保ち続けるのは体力の限界を試されるものでしたが、モニターに映る純白とオレンジレッドの鮮烈なコントラストを目にした瞬間、すべての苦労が報われたと確信しました。心から愛着のあるこの作品を通して、エウリュディケが纏う静謐な美しさと、揺るぎないひたむきな想いが皆様の心に届けば幸いです。