今回の儀玄のコンセプト撮影は、非常に挑みがいのあるものでした。廃工場やガレージを思わせるスタジオには、錆びたトタン壁、ヴィンテージバイク、年季の入ったソファ、青いドラム缶が配置され、赤の進入禁止標識やグラフィティがタフな終末インダストリアル感を醸し出しています。足元には凹凸や小道具が多いため、移動時は転倒しないよう細心の注意を払いました。
衣装のメインとなる黒のエナメルジャケットは、照明の反射や光斑のコントロールが質感の良し悪しを左右する極めて繊細な素材です。ウエストを絞った細身のカッティングに、白襟、青い薔薇、そして白髪ウィッグが鮮やかなコントラストを描きます。足元はヒールを合わせることで足首とふくらはぎのラインをシャープに強調。照明に照らされたストッキングの絶妙な光沢感を活かすため、立ち姿の重心を細かく調整しながら引き締まったレッグラインを演出しました。伝線を防ぐために現場の床や小道具を念入りに清掃し、予備のストッキングも常備して撮影に臨んでいます。
白髪のロングウィッグは毛先が乱れやすいため、毛流れに沿ってキープスプレーを塗布し、美しいストレートの落ち感をキープ。小道具の小鳥やカードを扱う手元もしなやかな所作を意識しました。メイクは赤ピンク系のアイシャドウとカラコンで目元の印象を深め、無機質なロケーションに負けない鋭い視線を意識。エナメル生地の折れジワを防ぐため、バイクのホイールに腰掛けたり、ソファの縁で脚を組んで重心を預けたりと、大腿部や体幹の力を使って美しいプロポーションを維持し続けました。
ライティングは背景の金網に赤い環境光を当て、被写体には温かみのあるキーライトを照射する寒暖の対比設計を採用。これによりエナメルやストッキングの立体的なテクスチャと鮮やかな発色が引き出されました。レフ板の位置やアングルをミリ単位で調整しながら丸一日がかりで撮り終えた写真は、狙い通り冷徹で洗練された最高のインダストリアル写真に仕上がっています。