今回の『原神』サンドローネの撮影準備では、黒・赤・金の複雑な装飾が施されたドレスの扱いに最も注力しました。パニエのワイヤーが硬めで動きが大きく制限され、少し油断すると裾を踏んでしまうほどでした。撮影前、ヘアメイク担当の方と金色のロングヘアを念入りに整え、頭頂部の白いリボンがうつむいたり振り返ったりしてもずれないようハードスプレーで入念に固定。アイメイクは寒色寄りに仕上げることで、キャラクター特有のどこか浮世離れした冷徹な雰囲気を表現しました。
ロケーションはレトロな書斎を選び、アンティークのタイプライターやダイヤル式電話機、重厚なハードカバーの本、木製のはしご、ピアノなどの小道具を配置。ブラインドから斜めに差し込む自然光の縞模様が陰影の立体感を引き立ててくれましたが、室内の光環境は複雑で、黒い衣装部分が光を吸収しやすかったため、レフ板でシャドウを起こしながら赤い宝石や金のパイピングの質感を緻密に浮き立たせました。足元は白ストッキングに黒のハイヒールを合わせましたが、ヒールが高く移動には支えが必要なほど。繊細な白ストッキングの伝線を防ぎつつ、強いテカリが出ないようカメラマンさんにサイド光の角度を微調整してもらいました。脚のラインを美しく魅せるため、座りポーズでは脚を前に伸ばしてスカートの立体的な重なりと調和させ、すらりとしたプロポーションを意識。手袋をした手でティーカップを握る際は滑りやすく、指先に適度な力を込めて手の形が硬くならないよう気を配りました。木製のはしごにもたれかかる姿勢では重心を微調整し、スカートの裾が自然なドレープを描くよう整えています。
所作においては大ぶりな動きを控え、ページをめくる仕草やカップの持ち手に手を添える動きで視線を誘導。全身カットとバストアップを織り交ぜて撮影し、寄りカットではキャラクターが放つ高慢で距離感のある眼差しを的確に捉えました。至近距離での撮影では衣装のシワやパニエの位置をこまめに直して完成度をキープ。中望遠レンズによる圧縮効果がレトロな空間に心地よい奥行きをもたらし、部屋のタッセルランプも柔らかなアクセント光として機能してくれました。手首をほっそりと見せる本の持ち方や、ストッキングのしなやかな質感を際立たせる足の配置など、細部にまで情熱を注いで調整。ピアノスツールに腰掛けたカットと本棚に寄り添う構図を厳選し、世界観を忠実に再現できました。クラシカルな空間での表現力を深め、当初思い描いていた通りの重厚な雰囲気を具現化できた充実の撮影となりました。