今回のロケーションには龍脊梯田を選び、ちょうど秋分前後の時期に合わせました。「白露に高山へ種を蒔き、秋分に平川へ種を蒔く」という古来の農事暦がまさに息づく季節です。『アークナイツ』シュウの作品撮りに向け、事前の準備には半月余りを費やしました。長時間の屋外撮影となるため、ヘアメイクや小道具の耐久性と安定性を確保することが最重要課題でした。ウィッグは淡いゴールドから毛先の青緑へと流れるグラデーションを施し、大量のキープスプレーとワックスを駆使して毛流れを強固に固定。頭頂部の角とエルフ耳を合わせると頭部の重量は普段のスタジオ撮影を遥かに超え、風が吹くたびに位置の微調整を余儀なくされました。
衣装は白を基調としたベアトップデザインで、胸元の幾何学的なスクエアパッチワークやウエストに揺れる精巧なタッセルを慎重に固定。着崩れや露出事故を防ぐため、インナーの仕込みや滑り止め対策にも万全を期しました。最も心血を注いだのは巨大な龍尾の造形で、写真の中で自然なしなりを描くよう内部の骨組みワイヤーをミリ単位で調整。長いトレーン状の尾を引いて高低差のあるあぜ道を歩くのはバランス感覚の真剣勝負であり、腰と体幹の力で尾の慣性をコントロールしながら、硬い造形物ではなく生きた生き物のような滑らかな質感を追求しました。幅広の青い羽織と袖は風に煽られやすいため、シャッターを切る直前まで袖口のドレープを丹念に整えました。
撮影当日の光はこれ以上ないほど恵まれ、午後4時半頃の陽光は濃密な黄金色へと染まり、実った稲穂の海に降り注いで背景に温かな空気のヴェールをまとわせてくれました。このような逆光での撮影は光の回し方が極めてシビアで、カメラマンさんはレフ板の角度を絶え間なく探り、顔の適正露出を確保しつつ背景の柔らかな光条の階調を残してくださいました。草むらに横たわるカットでは、斜面の上で体勢を崩さないよう全身の筋肉でポーズを保持しながら、尾を自然に巻きつける所作に全神経を集中。乾燥した稲藁がチクチクと肌を刺し、虫も多かったため、テイクの合間には何度も虫除けスプレーを塗り直しました。
シュウというキャラクターを梯田という本物の大自然に連れ出したのは、彼女が大地や生命の息吹と深く結びついた存在だからです。風が稲穂を渡っていく瑞々しい躍動感は、屋内のスタジオでは決して再現できない本物の魅力です。重い小道具を抱えて山道を登る道のりは体力の限界を試されるものでしたが、自然光の中でキャラクターが風景と溶け合っていく瞬間を捉えることこそ、旅撮影写真の至高の醍醐味です。この情景をフィルムに残せたことは、秋の収穫の季節がくれたかけがえのない宝物となりました。