スタジオで丸一日格闘した撮影でした。衣装の金属パーツが非常に多く、座るたびに腰の位置を直す必要がありました。帰忘の流離人のビジュアルを再現するため、ウィッグは黒から赤へのグラデーション加工を施し、頭の獣耳パーツもそれなりの重さがあるためヘアピンでしっかりと固定しました。メイクは目元の赤いグラデーションを際立たせ、グリーンのカラコンと合わせて、物憂げでありながらどこか距離感のある眼差しを目指しました。肩には花柄のタトゥーペイントを描いており、擦れて崩れないよう撮影中のポージングの振り幅にも配慮しました。
衣装のディテールは非常に入念に作られています。深紫赤の羽織には地紋が施され、袖口や裾の縁にはゴールドのパイピングがあしらわれています。赤いスカートに施された銀白の牡丹の刺繍はとても繊細で、胸元や腰回りのゴールドアクセサリーと相まって重厚感のある仕上がりです。さらに背後のもふもふとした白い狐尾は、構図が崩れないよう座り直すたびに潰さないよう細心の注意を払いました。
撮影セットにも強いこだわりを込めました。木製の屏風や格子窓、ローテーブルに並べた茶器や果物皿に、午後の柔らかな西日が差し込み、室内には美しい陰影が生まれました。理想的な光を捉えるため、カメラマンと共に照明やレフ板の角度を何度も調整し、金属アクセサリーの反射が自然に見えるよう体の角度をミリ単位で微調整していきました。
写真全体で静けさの中にある独特の緊張感を表現することを目指しました。視線の向け方、指先の配置、着物を手にする仕草まで、試行錯誤とテイクを重ねて最適な状態を模索しました。逆光に透ける尻尾の柔らかな毛並みと、硬質で冷たい金属装飾とのコントラストが印象的なビジュアルを生み出しています。着付けの調整から撮り終えるまで体力面ではハードでしたが、光と影が織りなすディテール豊かな仕上がりを見て、すべてのこだわりが報われたと実感しています。