完成したこの一連の写真を見ると、あの日、凍えるような強風に煽られて屋上で立っていることすらままならなかった瞬間が鮮明に思い出されます。
当日は雨だけでなく強風も吹き荒れ、屋上の体感温度は極限まで下がっていました。メイクの段階から体が震えっぱなしで、通気性のないエナメル調のラテックススーツを着ていたため、風が吹きつけるたびに体が冷え切って強張ってしまいました。一番辛かったのは脚でした。黒ストッキングと超ロングのニーハイヒールブーツを履き、美しい脚のラインを保つためにずっと筋肉を緊張させていたため、足の指先は凍えて感覚がほとんどありませんでした。雨に濡れた滑りやすいタイルの上に立ち、バランスを崩して転倒しないよう一歩一歩細心の注意を払って移動しました。
何より一番心が折れそうだったのはウィッグです。風があまりにも強すぎて髪がぐちゃぐちゃに乱れ、さらに雨水で顔に張り付いてしまいました。カメラマンさんが「生え際をしっかり押さえて!」と叫んでくれましたが、髪は全く言うことを聞いてくれませんでした。現場ではどうにもならなくなり、最終的にはレタッチで1枚1枚丁寧に描き直して補正するしかありませんでした。手元の小道具も散々で、持っていた一本の赤い薔薇は撮影開始早々に雨に打たれてしおれてしまい、花びらが地面一面に散ってしまいました。
強風でカメラマンのライトスタンドも何度も倒れ、最後は風を遮れる壁際や換気口の横に避難して撮影を続け、ストロボを直当てして光を回しました。過酷な状況ではありましたが、雨の日の特殊なライティングの下でエナメル素材と黒ストッキングの美しい光沢感が際立ち、背景の都市の明かりや後処理の赤いスモークと合わさって、力強く冷徹な独特の空気感を生み出すことができました。
今回の夜景ロケ撮影は完全に意志力との戦いでした。全員が寒さにガタガタ震えながらも、全力で息を合わせてやり切りました。当時は完全にボツ企画になるのではないかと諦めかけていましたが、レタッチを終えた完成写真を見た時、最後まで諦めずに良かったと心から思いました。本当に写真映えする素晴らしい作品になり、あの過酷な天候が生んだ思わぬサプライズとなりました。