今回のロケ撮影では、原作ゲームが持つ静けさと、どこか儚く浮世離れした空気感を形にするため、水辺でのアトリ コスプレに挑みました。この撮影のために、頭頂部におなじみのアホ毛を造形した淡いブロンドのストレートロングウィッグを用意し、両サイドを黒いリボンで結束。衣装にはクラシカルなセーラー服コスプレを採用し、白いゆったりとしたトップスに鮮やかな赤のスカーフ、袖口の青いラインを配置しました。強い陽光の下でもキャラクターの個性が埋もれないよう、メイクでは深紅のカラコンを際立たせることに注力しました。
当日は日差しが非常に強く、水面と白い砂浜からの強烈な照り返しによってカメラの露出管理は困難を極めました。最初のカットでは砂浜にしゃがみ込み、拾い集めた木の枝を手に砂の上へ文字を刻むシーンを撮影。文字の輪郭がはっきりと写るよう何度もなぞり直しました。足場が柔らかく不安定な砂地で黒のローファーを履いたまましゃがみ続ける姿勢は足首に相応の負担を強いましたが、構図の安定感を保つために重心を低く落とし、サイドからの光でくっきりとした美しい影を描き出しました。
続いて場所を移し、靴を脱いで素足で水の中へ足を踏み入れました。水温は想像以上に冷たく、足先が触れた瞬間に思わず身体が強張るほどでした。浅瀬に立ち、片足を軽く浮かせて両手でトップスの裾をつまむ所作は、水面の上で生地がふわりと軽やかに舞う質感を表現するための工夫です。しかし実際には、水面の揺らぎと屈折によって立ち位置を完全に静止させることが難しく、滑りやすい砂利の上で転倒しないよう慎重にバランスを保ち続けました。移動するたびに水面の反射光が白いセーラー服に反射し、息を呑むほど透き通った階調を生み出してくれました。
最も気に入っているのは、水中に佇む大きな岩の上に腰掛けた一連のカットです。構図の美しさを引き出すため、素足を水に浸したまま脚を優雅に交差させて着席。水面がきらきらと乱反射し、刺すような眩しさに瞼が閉じそうになりながらも、アトリとしての穏やかな表情を保つため表情筋をコントロールしました。水の中での撮影は衣装の裾が水分を含んで急速に重くなり、水面の眩光がオートフォーカスを迷わせるため、カメラマンさんと息を合わせて光とアングルをミリ単位で微調整し、納得のいく絵作りを追い求めました。
ラストは、水中に背を向けて立ち振り返るアイコニックなカット。水深はふくらはぎに達し、水面を渡る湿り気を帯びた風に長い髪が幾度も乱されましたが、テイクの合間に素早く手ぐしで整えて対応しました。浅瀬を歩く際は足元の藻や岩で滑らないよう、一歩一歩に神経を集中させました。
総じて水辺のロケーション撮影は、体力と忍耐力の限界を試される過酷な挑戦でした。強烈な光、予測不能な風、激しい水面の反射など克服すべき要素は多岐にわたりましたが、このロケーションは間違いなくアトリの物語そのものでした。水面の上で時間が永遠に静止したかのような感覚は、ファインダー越しにも深く心を揺さぶってくれました。スタッフ全員がずぶ濡れになりながら機材の防水に気を配り、撤収時には足裏に細かな砂がこびりつき衣装も生乾きでしたが、作品への愛とキャラクターの解釈をこのロケフォトとして昇華できた喜びは、何物にも代えがたい達成感となりました。