去年の桜の季節、ふと思い立ってこの博麗霊夢の撮影を決行しました。桜の見頃は本当に短くほんの数日しかないため、一週間前から天気予報とにらめっこを続け、最終的に選んだのがあの金曜日の早朝でした。早起きは本当に過酷で、深夜4時に起き出し、公園の開門と同時に駆け込んで場所取りを敢行。少しでも遅れれば、桜の木の下はカメラマンたちの望遠レンズで埋め尽くされてしまうからです。
この紅白の巫女服はレースのフリルや付け袖のレイヤードが極めて多く、着付けには相当な手間がかかり、背中や腰の帯をしっかり締め上げるためにアシスタントの手を借りました。ウィッグも事前に何度もカットとセットを重ね、髪飾りの紅白リボンや青い小花がブレないよう強固に固定。小道具面では、手にした御幣やお札はすべて手作業で組み上げた特注品で、紙垂(しで)には専用の紙を切り出し、屋外の突風で丸まってしまわないよう裏面に硬質芯地を貼って補強しました。メイクは赤みを帯びたアイシャドウとアイラインを際立たせ、赤いリボンと呼応させてレンズの前で凛とした生気を宿せるよう仕上げました。
撮影時の朝日は非常に眩しく、桜の季節の光はコントロールを誤ると画面全体が白っぽく眠い絵になりがちです。桜が持つ冷涼で幻想的なトーンを大切に残しつつ、被写体の鮮やかな「赤」を際立たせるため、レフ板で顔のシャドウを和らげ、背景の露出をわずかに持ち上げました。所作においては背筋を凛と伸ばした佇まいを意識。紅白の配色は桜の淡いピンクの中で美しく映える反面、少しの油断で画面が散漫に見えてしまいます。この衣装のスカートは贅沢な布量があるため、ターンする際は体幹でしっかりコントロールし、裾が不格好に膨らみすぎて軽やかさを損なわないよう配慮しました。現場ではカメラマンさんと常に意思疎通を図り、手前の桜の小枝を前ボケとして取り入れることで、画面に豊かな奥行きを創出しました。
現像のカラーグレーディングでは、背景の彩度をあえて抑えめに青灰色寄りのクールトーンへ振ることで、春の清涼な空気感を表現。過度なフィルター処理は避け、逆光で透ける毛先のハイライトの質感を忠実に再現しました。撮って出しの段階で十分満足のいく仕上がりでしたが、諸事情で作業が遅れ、ようやく今になって公開に至りました。今年もまた桜が開花したのを機に、昨年のストックを整理して大切な記録として残せたことを嬉しく思います。『東方Project』の長年のファンとして、胸を張ってお披露目できる本格的なロケ写真をずっと残したいと願っていました。派手な合成エフェクトに頼らずとも、本物の光影と桜本来の美しさが画面全体に確かな説得力を吹き込んでくれました。フル装備で桜林の中に何時間も立ち続ける屋外ロケは足が痺れるほどの体力勝負でしたが、今年もまた春の終わりに滑り込み、心躍る作品を創り出せることを願っています。