今回のオデットのバレエフォームの撮影において、最大の難関となったのはトウシューズ着用時の重心コントロールでした。キャラクター特有の冷涼で気品に満ちたオーラを体現するため、ボディラインをタイトに引き締める青いベルベットのレオタードに、何層もの白紗が重なるチュチュドレスを着用。美しい補正効果が得られた反面、身体の可動域は大きく制限されました。とりわけ片足立ちで腕を広げるアラベスクのポーズでは、途切れのない流麗なラインを描くために甲を限界まで押し出し、全身の体重をつま先だけで支え続ける必要があり、ふくらはぎの筋肉の持久力が極限まで試されました。
腰掛けの構図は一見シンプルに見えますが、白いブロックの縁に浅く座って脚のラインを美しく魅せるため、脚の大部分を宙に浮かせ、つま先をピンと下へ伸ばして緊張感を維持。白ストッキングにブルーのサテン地トウシューズを合わせた配色は極めてノーブルな冷艶さを放つ反面、ホコリが目立ちやすいため、撮影中も床面を何度も清掃しながら進行しました。
また、後ろ足を高く上げた1枚については配慮が必要だったため、レタッチで平面的な雪だるまのスタンプを配置してカバー。やむを得ない処置ではあったものの、クールで張り詰めた世界観の中にちょっぴりキュートな遊び心が加わる結果となりました。ヘッドピースの固定も一筋縄ではいかず、銀青のウィッグに黄金の角飾りがセットされているため、ターンの所作で揺れ動いて落下しないようスタイリングには細心の注意を払いました。
ライティングは劇場の舞台照明を意識した寒色系の光を設計し、ベルベット生地が放つ陰影のグラデーションを克明に描写。バレエは単なるポージングにとどまらず、身体のすべてのラインに固有の力点の方向性が存在します。オデットの気品を忠実に演じるため、事前にバレエ経験者の友人にアラベスクや伝統的なポール・ド・ブラの要領を教わって撮影に臨みました。視線の角度を定め、シャッターの合間に呼吸を整えながらの撮影は体力を激しく消耗しましたが、剛柔が調和した緊張感あふれる仕上がりの中に、抑制と力強さを併せ持つバレエ芸術の美しさを確かに刻み込むことができました。