今回の稗田阿求コスプレの衣装は、デザイン決定から小道具の準備まで数週間ほどかかりました。特に東方Projectシリーズのキャラクター特徴に合わせ、衣装の形制(シルエット)においていくつかのアレンジを行いました。
ウィッグに関しては、紫のロングストレートヘアが阿求の象徴的な特徴です。今回は適度なツヤ感のある毛質を選び、設定通りの滑らかな質感を再現できるよう努めました。さらに白い花と赤いタッセルの髪飾りを添え、サイドにアクセントをつけることで視線のポイントを作っています。撮影当日は風が強く、前髪が乱れないようウィッグのベースをしっかり固定する必要がありましたが、最終的な仕上がりは非常に綺麗に定格できました。
衣装で一番こだわり抜いたのは上着のシルエットです。オレンジ色のアウターに白いインナーを合わせ、襟元のレイヤー感を何度も調整して、厚苦しくならず自然に見えるようにしました。ボトムスは深い赤の改良型袴で、両サイドに白いレースフリルをあしらい、伝統的な和服の硬さに柔らかい要素を加えました。この衣装は着て歩くと適度な重量感があり、厚底の下駄で木製の床を歩く際に響く「カランコロン」という心地よい音が、レトロな雰囲気に見事にマッチしていました。こうした和風コスプレの改良袴を着用する際、最も気を配るべきは動きの幅です。座る時に前裾に気をつけておかないとレースが丸まってしまうため、あらかじめ裾を整える必要があります。また撮影時は足元のバランスを崩さないよう、木板の上で下駄をしっかり踏みしめるよう注意しました。
ロケーションには、伝統的な木造回廊のある場所を選びました。頭上に咲き誇るピンクの花々が衣装の色合いと綺麗に響き合い、暖かみのあるオレンジ、深紅、ピンクの組み合わせが非常に映える二次元撮影の空間を生み出しています。地面に散った花びらが雰囲気作りの決め手となり、大げさなポーズを作らなくても、ベンチに腰掛けて小さな本を手に取り、枝木の隙間から差し込む光を少し見上げるだけで、阿求の持つ文学的で静かな性格を捉えることができました。
カメラマンの演出と合わせて、視線を単に本に向けるだけでなく、画面の左上をうっすら見つめるような余白を持たせました。この「留白(余白)の美」が非常に重要です。差し込む光の筋を捉えるため、座る位置や腕の高さ、本の開き具合まで何度も細かく微調整し、本を持つ動作が硬く見えないようにしました。また垂れ下がる花枝に包まれるような奥行きを表現するため、人物主体と背景の建築の遠近感を際立たせるポートレート用のレンズ焦点距離を厳選しました。
レタッチの色調調整に関してはあまり過度な加工をせず、木目の質感や花々の本来の色合いを尊重し、低彩度の自然光で静寂感をより純粋なものに仕上げました。東方Projectのファンの方々はキャラクター再現の雰囲気にこだわりを持っているため、ドラマチックな光影よりも古風撮影のような写実的でレトロな空気感を大切にしました。
完成した写真を見返すと、理想通りの静かな春秋の空気感が凝縮されていると感じます。ロケ撮影は道具の持ち運びが大変で、木材のささくれに注意しながら撮影台を置く苦労もありましたが、このような素晴らしい画面を残せたことで、すべての苦労が報われました。