今回のロケーションは川沿いの大きな橋の下を選びました。ロケハンの段階から光の作り方にはかなり頭を悩ませていました。本来は黄昏時のブルーアワーを狙っていたのですが、当日は雲が低く垂れ込め、夕日が瞬く間に沈んでしまったため、思い切って深夜の撮影にシフトしました。ですが街灯が灯り、川面に長い光の反射が伸びるにつれて、逆にミステリアスでクールな夜景ロケならではの美しさが立ち上ってきました。
まずは衣装のディテールからご紹介します。グラデーションのかかった赤黒のヘアスタイルに目が奪われがちですが、一番苦労したのは首元のビーズチェーンと白い角モチーフのヘッドドレスでした。プラ板を熱で成形して着色し、頭の形にフィットするよう隠しワイヤーで補強したおかげで、一晩中撮影しても一切ズレませんでした。小道具担当さんには本当に感謝です。トップスのシアーな袖にはかすかな柄が織り込まれており、ストロボの光を受けるとほのかなシルクのような光沢を放ち、胸元のグレーブルーのハード胸当てと素晴らしい異素材の対比を生み出します。不規則なカッティングの裾(ヘムライン)はデザインの要で、深青とくすみピンクの切り替えが歩くたびに美しくたなびきます。当日は風が強く、スカートがなびいた瞬間を捉えたカットは少しラフでありながら、戦闘中のリアルな動的テンションを宿してくれました。
武器小道具については、今回は2種類を持参しました。1つは鋭い攻撃姿勢を見せる細身の剣、もう1つは重厚感のあるフック付きの太刀です。2枚目と3枚目のカットはゴツゴツした石畳の川辺の撮影で撮影したため、足元が非常に滑りやすく、長い刀身のバランスを保つのに全身の体幹を使いました。カメラマンさんからは「顎を引いて目線を落として」と指示が出続けましたが、刃で顔が隠れないよう肘の角度を何度も調整し、20枚以上撮影した中から納得のいくカットを選び抜きました。
そしてカバー写真に選んだ、鉄柵に身を寄せた一枚についても触れさせてください。撮影の終盤に偶然見つけたスポットで、街灯が錆びたフェンスを照らし、深青の川面を背景に暖色の輪郭光(リムライト)を浮かび上がらせていました。冷色と暖色が交錯するこの雰囲気が大好きで、このライティング下では黒タイツとブーツのラインが綺麗に引き締まり、衣装のウロコ状の反射素材も美しく発光して、影の部分を潰さずに深みのある階調を表現できました。
正直なところ、このキャラクターを演じる上で一番難しかったのは表情のコントロールです。設定上クールなキャラクターなので口元の笑みを封印しつつ、瞳の奥に強い意思を宿らせる必要がありました。目線の角度を5種類以上試した結果、少し伏せ目にしながら正面を平視するアングルが、衣装のソリッドな印象に一番マッチすると気づきました。コルセットと胸当てがかなりタイトで呼吸も苦しかったのですが、美しい立ち姿を維持するため体幹を締め続け、結果としてその苦しさを微塵も感じさせない仕上がりになりました。
夜景人像のライティングには様々な手法がありますが、今回は2灯のストロボを使用しました。1灯は右手前からメイン光としてハイライトを作り、もう1灯は後方から髪と肩のラインをかたどる輪郭光として配置。これにより、被写体と背景の橋の玉ボケ(ボケ味)を分離させつつ、川面の反射光に埋もれない立体感を作り出しています。レタッチでは色温度と影のトーンを微調整するにとどめ、夜のリアルな暗部とフィルムライクな粒子感を残すことで、ファンタジーコスプレとしての臨場感を高めました。
ロケーションとなった川辺の石畳と金属の防護柵は、大自然の水面とインダストリアルな質感が美しい対比を描き、遠くの斜張橋が構図に深い奥行きを与えてキャラクターの孤高な存在感を際立たせてくれました。ただ、夜露と水蒸気が上がる深夜までの短い勝負だったため、霧が出る直前に撤収できたのは幸運でした。1日中体力を使いましたが、完成した写真を見返すとすべてのこだわりに意味があったと実感しています。