今回の写真は故宮の鮮やかな赤い壁の傍らで撮り終えたものです。この淡いピンクの明制漢服に合わせるため、伝統的な対称美を意識した重厚な日本髪風の髷(ヘアピース)を仕立てました。地毛と付け毛を組み合わせ、30本以上のヘアピンを駆使して頭部を固定し、真珠、蝶、花をあしらった豪奢な髪飾りを添えて両サイドに長いピンクのリボンを垂らしました。衣装の布地には上品な光沢があり、陽光を浴びると金糸や淡いブルーで刺繍された草花や小鳥の意匠が繊細な輝きを放ちます。ボトムスは伝統的なプリーツスカートで、裾には華麗な底襕(ていらん)刺繍が施されています。柔らかく優しいペールピンクのトーンは、故宮の深紅の壁を背景に鮮やかな色彩のコントラストを描き出し、抜群の絵映えを見せてくれました。
今回の撮影のために用意した小道具は、藤編みの鞠と糸綴じの古典籍の2点です。地面に腰掛けたカットでは、重みのあるスカートを広げ、両手で藤の鞠を抱えながら伏し目がちに微笑んだりレンズを見つめたりしました。スカートの裾が美しい円弧を描くよう形を整え、布地を潰さないように姿勢を維持する必要があったため、背筋のキープ力が試されました。本を手にしたカットは立ち姿で、片手で開いた本を持ち、もう一方の手で頭の髪飾りに優しく触れながら、端正で奥ゆかしい表情を意識。後半の動きのあるカットはかなりの体力を消費し、藤の鞠を抱えて身を傾けたり、その場で軽やかに旋回したりしました。スカートを綺麗な円形にふわりと翻すため、5、6回連続で回転。髪のリボンが風をはらんで舞い上がり、瞬間のスナップならではの生き生きとした躍動感が生まれ、足元から覗く刺繍靴も愛らしいアクセントになりました。
午後の日差しが斜めから差し込み、石畳と紅壁に深い陰影を落とします。明制漢服の大袖と立襟は立ち姿をすらりと美しく見せてくれますが、この重層的な衣装を纏って故宮の石畳を歩き続けるのは体力的にもかなり過酷で、特に回転する動作では頭部の重量感もあって重心を捉えるのに苦労しました。それでも、数百年の歴史を刻む壮大な建築の前に立ち、瑠璃瓦や反り返る飛檐(ひえん)を見上げていると、どの片隅にも語り継がれた物語が息づいているように感じられます。紅壁と金瓦に調和する明代の装いは、空間そのものと溶け合う静謐で古典的な視覚美を紡ぎ出してくれました。作為的な表情を作ることなく、静かにその場の空気に身を委ね、この瞬間の光と影をありのままに収めた大切な記録です。