「お兄様、そこまで仰るなら、本日は存分に剣を交えましょう――」この撮影企画はかなり前から温めていたもので、真剣勝負の気迫と剣道特有の緊張感を最もリアルに再現するため、あえてこの剣道着スタイルを選びました。上着は清廉な白の打ち合わせ半袖で、襟元から覗く淡いブルーの重ね襟がアクセントに。ボトムスには深藍の袴調ワイドパンツを合わせ、腰元には鮮やかな朱色の飾り結びとタッセルを締めました。ヘアメイク面では、淡い水色のハイポニーテールにパッツン前髪を合わせ、サイドにピンクの組紐飾りをセット。目尻に差した紅のグラデーションと澄んだ蒼のカラコンが調和し、神里家の令嬢ならではの凛とした清冷な気品を一瞬にして引き立ててくれました。
今回の撮影で最も過酷な試練となったのは、手にした小道具の重みでした。携えた竹刀(バンブーブレード)と長尺の木刀はずっしりと手応えがあり、確かな重量感を伴います。1枚目の片膝立ちで両手に竹刀を構えるカットでは、手首に力を込めつつ切っ先を自然に地へと向ける絶妙な角度を求め、カメラマンさんと十数回も微調整を繰り返しました。腕のブレを抑えつつ背筋と体幹を真っ直ぐに保つ姿勢は想像以上の筋力を要し、瞬く間に心地よい汗が滲み出しました。2枚目の正座から左手を床に添え、右手で垂直に鞘を握る所作では、余裕ある佇まいを演出するために手元の確かな保持力が不可欠に。3枚目の刀の柄頭に両手を重ねて寄り添う立ち姿では、圧倒的な剣士の威圧感を醸し出すため、研ぎ澄まされた鋭利な眼差しでレンズを射抜きました。
白ホリスタジオに差し込む寒色系のライティングが白と青の道着を美しく照らし出し、布地の凛としたハリを際立たせてくれました。普段は武具を構えるハードなポージングに慣れていない私ですが、撮影を重ねるうちに、腰と背筋の力で腕の所作をリードする剣術の身体感覚が徐々に掴めてきました。剣道着は袖口が広いため、構えや微細な動きのたびに生まれる布のドレープが画面に心地よい躍動感をもたらしてくれます。脱ぎ揃えた下駄と白足袋を傍らに添え、無駄のないライトグレーの床面と調和させることで、極めて洗練された和のミニマリズムを構築しました。
今回の撮影を通じて、構えから残心に至るまで剣士が研ぎ澄ます静かな集中力を肌で体感することができました。シャッターが切られるたびに息を整え、微動だにせず姿勢を静止させることで、最もブレのない決定的な一瞬を捉えていただきました。武士の気迫が宿るこの和風写真を通じて、剣道着ならではの唯一無二の魅力を感じていただければ幸いです。また次回、一手お手合わせ願います。