今回の撮影は、水辺で綺麗にポーズを取っているように見えて、実際には数々のハプニングに見舞われたハードな体験となりました。
まず小道具について、造形師さんが用意してくれたのは本物の蓮の葉でした。本物の蓮の葉は表面にワックス層があり水滴が転がる美しさがある反面、それ自体がかなり重く、茎も折れやすいのが難点です。傘のように掲げつつ葉が垂れ下がらないように形を保ち、溜まった水滴が顔や衣装に落ちないよう配慮しながら角度を探るのは至難の業でした。もう一つの金環の小道具も想像以上に重く、片手で持ち続けると手首にかなりの負担がかかりました。
撮影場所には蓮池のほとりを選びましたが、水辺の岩場には苔がびっしりと生えており足元は滑りやすい状態でした。特に片足を高く上げる立ち姿(表紙のカット)では、お茶目な愛らしさを出すために狭い岩の縁に片足で立ち、もう片方の足を後ろに跳ね上げつつ上半身を真っ直ぐ保つ必要がありました。重心を安定させるため、このポーズだけで十数回も試行錯誤を繰り返しました。白ストッキングにおでこ靴という足元だったため、少し踏み外せば転倒する危険があり、白いスカートの裾が泥水で汚れないよう常に気を配り続けました。
衣装は白を基調とした和風アレンジで、大きな袂やエプロンの生地に適度なハリがあるため細かいシワができやすいのが特徴です。ボリュームのある袖は腕を上げると風をはらんで着太りして見えやすいため、シャッターを切るたびに袖口の落ち感を丁寧に整え直しました。夏の屋外で白ストッキングを履くのは蒸し暑く、虫刺されとの戦いも含めて野外ロケならではの過酷な試練となりました。
ライティング面では、周囲に生い茂る高木の間から木漏れ日が斑状に差し込む典型的な林間光でした。こうした環境光ではレフ板で顔を起こさなければ顔が影で潰れてしまうため、カメラマンさんが太陽の位置に合わせてレフ板の角度を絶えず微調整してくれました。特に草の上にしゃがみ込むカットではレフ板の取り回しが難しく、肌のテカリを抑えつつ現場の「空気感」を損なわない繊細な光のコントロールが求められました。
この作品の空気感は、周囲の豊かな自然環境に大きく支えられています。カメラマンさんが語っていたように、撮影の合間には周囲から絶え間なく蛙の鳴き声が響き渡り、まさに「蛙の声一面に満つ」という情景そのものでした。水面を覆い尽くす幾重もの蓮の葉が遠くの白壁と黒瓦の建物をほのかに隠し、背景に重厚な奥行きをもたらしています。構図では被写体を大きめに配置し、開放F値で背景の緑を柔らかくボケさせることで画面の煩雑さを抑え、白い衣装と緑の小道具の鮮やかなコントラストを際立たせました。
現像では過度なフィルターを避け、爽やかなグリーンの色調を大切にキープ。明暗のコントラストを微調整して蓮の葉の葉脈のディテールを美しく引き出し、脚のラインを自然に整えて全体のプロポーションを調和させました。カメラマンさんとの呼吸もぴったりで、キャラクターが持つ自然体の瑞々しい魅力を存分に引き出すことができました。
苦労も多かった分、完成した写真が頭の中で思い描いていた理想のビジュアルと完璧に重なり合った瞬間は格別でした。過酷なロケを乗り越えるたびに、写真の中に本物の物語が宿るのだと実感した撮影となりました。