今回の衣装は異素材の切り替えが多く、着心地という面ではまさに挑戦の連続でした。上半身の黒レザーはハリがあって美しいシルエットを保てる反面、混雑するコミコン会場で空調が効きづらい環境では通気性がほぼゼロ。蒸れを少しでも和らげるため、インナーの白い部分は薄手の生地をセレクトしました。襟元の紫グラデーションのネッカチーフや胸元のボウタイ装飾はスナップボタンと安全ピンで固定しているため、撮影中はパーツがズレないよう大きな動作を控える必要がありました。
最大の難関はボトムスの構造でした。レザーショートパンツの外側には、青から紫、そして白へと美しく移ろうアシンメトリーなグラデーションシフォンが大胆にあしらわれ、非常に豊かな立体感を生み出しています。シフォンの美しいドレープを保つには内側のハードチュールによる支えが不可欠ですが、歩く際に周囲の人のリュックや金具に引っかかりやすく、会場内をスムーズに移動するため終始小股の早歩きを徹底しました。ハイスリットのデザインは抜群の脚長効果を発揮してくれますが、メタル装飾付きの黒のヒールショートブーツと相まって、一日中歩き回るとふくらはぎの筋肉が悲鳴を上げるほど過酷でした。
そして注目の武器プロップについて。ダークトーンの巨大な大鎌は、青い刃先部分に塗り分け塗装が施され、メカニカルなジョイント部分はEVAフォームとPVCパイプで成形した上にマットブラックの塗料を吹き付けています。総重量は約1.5〜2キロあり、片手で肩に担ぐだけでも肩を支点にしてバランスを取る力仕事でした。両手で水平に構える際はモーメントの負荷がかかるため、手首の筋肉を常に緊張させ続ける必要があります。会場内の移動時は刃先を常に前方に倒すか垂直に掲げ、周囲の安全な距離感を常に予測しながら通行人にぶつからないよう細心の注意を払いました。
ヘアメイクでは、毛先にかけて紫やピンクへと移ろうグラデーションを再現するため、ダークブルーのウィッグに何層もの毛束を縫い込みました。頭頂部のトレードマークであるアホ毛は、ワイヤーとハードスプレーの二重補強でセットし、人混みを歩いても崩れず綺麗な弧を描き続けるよう工夫。アイメイクには紫がかった青のカラコンを選び、わずかに跳ね上げたアイラインで凛々しく鋭い眼差しを演出しました。ガラスの吹き抜け天井から差し込む自然光はカメラマンさんの露出管理の腕前が試され、少しでも露出オーバーになるとスカートのグラデーションが白飛びしてしまいます。人混みを避けながら何箇所も画角を探り、ようやくこのクリーンでスタイリッシュな速報写真を収めることができました。この武器の重厚感は、レタッチでコントラストを少し引き締めるだけで過度な加工を必要とせず、最高に写真映えしてくれました。
ポージングの表現力に関して言えば、これほど視覚的インパクトの強い大型武器を構えるには美しい体幹のキープが不可欠です。胸を張り腹筋を引き締めるのは基本中の基本で、猫背になると武器の持つ威圧感に負けてしまいます。例えば武器を片手で脚の横に添えたカットでは、腰を反対方向へグッと引き締めて重心の釣り合いを取り、前脚を軽く曲げて後ろ脚をスッと伸ばすことで、しなやかな脚のラインを強調しました。シフォンスカートがふわりとなびく瞬間は静止ポーズでは捉えにくいため、歩行時の慣性を利用してカメラマンさんに連写モードで激写してもらいました。会場の床は段差や配線コードが多く、ヒールを履いて大型武器を抱えながら移動するのは、美しさを保つと同時に安全への配慮が不可欠であり、これぞコスプレ遠征の基本技術だと実感しました。会場で似たようなスタイリングを撮影される際は、サイドや斜め前方から狙うと衣装の立体感がより一層引き立ちます。光が十分に回る場所で撮影すればメカニカルな塗装のテクスチャも鮮明に浮かび上がりますが、今回のカメラマンさんのアングルはまさに完璧で、衣装の機能美とキャラクターの冷徹な世界観を見事に調和させてくれました。