今回の撮影は『ソードアート・オンライン』フェアリィ・ダンス編のアスナのスタイリングに焦点を当てました。
衣装面では、軽やかなシフォンとオーガンジーをふんだんに使用した純白のロングドレスが主役です。妖精特有のエアリー感を表現するためスカートは何重ものレイヤード仕立てとなっており、歩行時や腰掛ける際にはドレープが乱れてラインを崩さないよう細心の注意を払いました。胸元にあしらわれた真紅のリボンが視線を集めるアイキャッチとなり、象徴的な尖ったエルフ耳のプロップを装着。メイクは素肌の透明感を際立たせるベースにオレンジ系のリップを合わせ、アイメイクをナチュラルに整えることで、アスナが持つ優しさと芯の強さを両立させました。
ロケ地には人口岩や水辺、瑞々しい熱帯植物が生い茂る屋内温室ブースを選定。岩肌の表面はゴツゴツと凹凸が多く、ポージングの美しさを保ちながら体幹のバランスを維持するのには集中力を要しました。岩の上に横向きに浅く腰掛け、片手をそっと差し伸べながら視線をわずかに伏せることで、鳥籠の世界に囚われていた彼女の静謐な佇まいを再現。天窓から降り注ぐ柔らかな拡散光が白いドレスと明るいウィッグを優しく包み込み、背景の灰褐色の岩壁に対して美しい立体感を描き出しました。画面の純度を損なわないよう作為的なカラーフィルターを排し、空間本来のナチュラルな色調を大切にしています。
ウィッグのスタイリングには多大な時間を費やしました。キャラクター固有の明るいオレンジゴールドの毛髪を表現するため、前髪やサイドの姫毛を丹念に梳いて毛量を整え、スプレーでエアリーな束感をキープ。エルフ耳の装着も極めて繊細な作業で、専用の接着剤を用いて肌の境界線を自然に馴染ませ、寄りのアップでも違和感が出ないよう入念に仕込みました。午後から夕方にかけての撮影中、温室内は湿度と気温が高く、幾重にも重なるロングドレスとフルウィッグの着用は蒸し暑さとの戦いでしたが、表情に一切の疲労感を出さないようプロ意識を持って臨みました。
正直なところ、「目を覚まして、今は2014年だよ」というキャプションを目にした瞬間、胸に熱いものが込み上げました。あの頃『ソードアート・オンライン』は社会現象となり、誰もが夢中で物語を語り合っていました。あれから時が流れ、今や私も毎日通勤に追われる社会人です。今回の撮影も週末の貴重な合間を縫って実現したものでした。前日まで会社で残業に追われ、翌朝早起きしてメイクとウィッグを整えスタジオへ直行。テイクの合間にもスマホで業務連絡を返すなど、まさに二次元と三次元を激しく行き来する現実を噛み締めました。硬い岩の上でスカートの広がりを直しながらの撮影は体力を削り、水辺の蚊に刺されても画面を損なわないようじっと耐え忍びました。
アスナという存在は、私にとって特別な意味を持つヒロインです。凛として強く、自立していながら、決して失われない深い優しさ。この作品を完成させるため、手足の伸びやかな角度に至るまで身体表現を徹底的に磨き上げました。社会に出てから学生時代のように純粋な熱量だけで趣味に没頭するのは大きな気力と勇気を要しますが、レンズの前に立った瞬間、すべての雑念は吹き飛びました。植物の深緑と岩肌のグレーを基調に純白のドレスを浮かび上がらせ、前ボケにグリーンを配して奥行きを演出したことで、静謐な童話のような世界観を結実させることができました。
過酷な撮影ではありましたが、仕上がった写真の濁りのない透明感と、そこに確かに息づくアスナの姿を目にした時、胸いっぱいの満足感を覚えました。この写真集は最愛のキャラクターへの敬意であり、長年コスプレを愛し続けてきた私自身の二次元の思い出の確かな証です。どれほど多忙を極めようとも、自分の「好き」のために時間を注ぐことの尊さを再確認しました。過度なレタッチに頼らず、光と影、そして肌の質感をありのままに生かしたこの作品を経て、また次の機会にも心から愛するキャラクターたちを形にしていきたいです。