今回のロケ地には緑豊かな木々が生い茂る森林地帯を選びましたが、その景観はまさに『東方Project』に登場する魔法の森そのものの佇まいでした。アリス・マーガトロイドを忠実に再現するため、事前に淡いブルーのドレスを用意。襟元の白いレースケープやウエストのピンクのリボン、スカート裾の透かし彫り模様に至るまで、細部のディテールを入念に確認しました。本来の設定ではレザーシューズが主流かもしれませんが、泥や下草が入り混じる自然の足場を考慮し、ブラウンの編み上げブーツをセレクト。歩きやすさを確保できるだけでなく、クラシカルな装いに意外なヴィンテージ風の抜け感を添えてくれました。
ウィッグは緩やかなカールの金髪を使用し、白レースのヘッドドレスとピンクのヘアリボンをセット。メイクは瞳の青さを際立たせ、神秘的でありながらどこか気品ある表情を目指しました。小道具の魔導書はこの撮影のために仕立てた特注品で、赤地に金色の縁取りと白いレースを施し、手に取ったときの重厚感にこだわりました。これまでは整った洋館やスタジオで撮影することが多かったのですが、今回は日常感を存分に表現したいと考えました。ドレスのウエストラインが細身に仕立てられているため、美しいシルエットを保てるよう事前準備も抜かりなく行いました。ピンクのリボンはドレスのアクセントになるだけでなく、視覚的にスタイルを美しく見せてくれます。泥や落ち葉に覆われた森の中では、ブーツの無骨さがかえって自然体な空気感を引き立ててくれました。樹木や草の上に置くことを考慮してタフな素材を選び、あえてエイジング加工を施したことで、赤と金の表紙が薄暗い森の背景の中で鮮やかに浮き上がりました。
当日は好天に恵まれたものの、森の中の木漏れ日は光のコントロールが非常に困難でした。木々の隙間から落ちる光斑はドレスを美しく彩る反面、油断すると顔が白飛びしてしまいます。逆光や半逆光など、最適なアングルを常に模索し続けました。小川のほとりで撮ったカットでは、足元を滑らせないか内心ヒヤヒヤしながらスカートの裾を掲げて佇みました。枯葉や雑草が一面に広がる地面に腰を下ろす場面では、衣装が汚れることも気に留めず、いかに自然な仕草に見せるかだけに集中しました。静まり返った森には時折鳥のさえずりが響き、風が吹き抜けるたびに揺れるスカートとピンクのリボンの動きを何度も連写してベストショットを捉えました。私にとってアリスは派手に魔法を操る存在というよりも、自分だけの世界を大切にする物静かな少女です。魔法の森の中で、彼女はこうして一人静かに散策し、書物を広げ、人形の研究に没頭しているはず。そう思い、額に手をかざして遠くを見つめたり、切り株から芽吹いた若葉をじっと見つめたりと、思索に耽る瞬間をポージングに散りばめました。特に気に入っているのは、木漏れ日に向かって手を広げたり、片手に本を持ちながらもう一方の手で裾を持ち上げたりといった動きのあるスナップです。静止していたドレスに命が吹き込まれたように感じられます。ロケ撮影は天候に左右されやすく、雲が太陽を遮るたびに光を待つ時間もありましたが、仕上がった写真の柔らかな光の階調は思い描いていた質感そのものでした。蚊に悩まされ、重いブーツでぬかるみを歩き回る体力勝負の撮影でしたが、写真に映るドレープの陰影、レースの織り目、そして透き通るような緑葉の光を目にした瞬間、すべての苦労が報われたと実感しました。根気強く付き合ってくれたカメラマンさんと、素晴らしいインスピレーションをくれた森に感謝しつつ、この静謐な世界観を皆さんに楽しんでいただければ幸いです。