今回の撮影における中心的なコンセプトは「オタク女子風」の空気感です。複雑な背景セットを排し、被写体の佇まいとミニマルな小道具だけで空間の情緒を形作ることを目指しました。猫耳好きの属性を際立たせるため、あえて黒地に白毛の猫耳カチューシャ(髪飾り)を選び、黒髪ストレートの低めツインテールに合わせました。ぱっつん前髪は日本風写真の王道スタイルです。メイク面もこれに合わせて調整し、目の下から頬にかけて広めに赤ら顔風のチークを入れ、微かに物憂げな眼差しを合わせることで、部屋に長く引きこもっているようなアンニュイで飾らない日常感を醸し出しました。
衣装のコーディネートはデイリーなカジュアルミックスを意識しました。ゆったりとしたグレーがかったパープルのワイドネックTシャツをベースに選び、首元の広い開きからインナーの白いキャミソールの細ストラップが覗くようにしました。この絶妙な肌見せ加減が、計算高さを感じさせない夏の清涼感をもたらしてくれます。Tシャツにプリントされたかすれた英字ロゴも、日常のリアルな質感を高めています。ボトムスにはヴィンテージ加工を施した淡色デニムショートパンツを合わせ、裾のフリンジ処理がトップスの柔らかい風合いと小気味よいコントラストを描き出しています。
このスタイリング最大の要となるのが足元のレイヤードで、白いオーバーニーソックス(白ソックス)こそが写真全体の鍵を握っています。白のオーバーニーソックスは脚のラインを美しく整えるだけでなく、視覚的にもカラーバランスに軽やかな抜け感を与えてくれます。背景が完全な純白ホリゾントであるため、ボトムスまで淡色で揃えると視覚的なアンカー(重心)を失ってしまいがちですが、白ソックスが白背景の中で脚の輪郭を絶妙に際立たせ、全体のピュアな統一感を崩すことなく視線を引きつけてくれます。
撮影で使用した小道具は、1脚の透明アクリル製折りたたみチェアのみです。クリア素材は純白の背景において非常に優秀で、余計な濃い影を落とすことなく光を素直に透過させてくれます。カメラマンさんの指示で椅子の上に膝立ちになり、身体を前傾させて背もたれに両手を重ねたり、片手をそっと上げて猫耳に触れたりしました。膝立ちの姿勢は大腿部のラインをよりすらりと長く見せ、薄手のオーバーニーソックスに包まれることで脚の筋肉の自然な起伏が艶やかに浮き彫りになります。重心を前に預けることでウエストが自然と緩やかなアーチを描き、非常にダイナミックで伸びやかな構図が完成しました。
スタジオのライティングはハイキー調で構成されました。正面から当てられた柔らかな光が肌を透き通るように白く見せてくれますが、顔立ちの立体感を保つため、ヘアメイクさんが頬骨の下に丁寧なシェーディングを仕込んでくれました。アクリル板の上で膝立ちを保つ姿勢は想像以上にバランスを取るのが難しく、重心がぶれると身体全体が硬くなってしまうため、撮影中は終始体幹を意識し続ける必要がありました。力みのない、自然体でアンニュイな一瞬を切り取ってもらえるよう、視線の揺らぎや肩の角度をミリ単位で微調整し続けました。
今回の作品には特定の版権キャラクター設定はありませんが、猫耳、ツインテール、オーバーニーソックスといった要素それ自体が、二次元カルチャーの記号を具現化したものです。私自身、普段から猫耳のアクセサリーを集めるのが大好きで、そうしたお気に入りのエレメントを日常感のある写真作品に落とし込めたことは非常に楽しい体験でした。大掛かりで華麗な衣装やセットを構える撮影と比べ、こうしたオタク女子風の撮影は、レンズの前で醸し出す被写体の空気感のコントロールがよりシビアに問われます。大げさなアクションを控え、呼吸感や繊細な表情の移ろいによって世界観を伝えることの面白さを改めて実感した日本風写真の撮影となりました。