『うみねこなく頃に』のベアトリーチェを忠実に表現するため、今回は衣装選びから小道具の調達に至るまで入念な準備を重ねました。彼女が纏う華美でありながらどこか危険な香りを放つ気品を再現すべく、ジャケットには仕立ての美しいかっちりとしたシルエットを選定。シャツにピンクのネクタイ、そして黒のベストを重ね着することで重厚なレイヤードを生み出し、ウエストラインを美しく引き締めました。ボトムスの赤い多層プリーツミニスカートは視線を集める最大の主役。ふんわりとしたボリューム感があり、赤黒ボーダーのサイハイストッキングと黒のロングブーツを合わせることで、歩くたびにスカートとソックスの鮮烈なコントラストが際立ち、脚のラインをすらりと美しく魅せてくれます。グローブの縁には繊細なレースがあしらわれ、ジャケットの袖口からも赤いレースが覗くなど、寄りカットで映えるディテールを徹底。手にした長いステッキは彼女の魂とも言える小道具で、立ち姿でも腰掛ける際でも所作に自然な説得力を与え、傲慢にして優雅なオーラを一段と引き立ててくれました。黄金色の髪を再現するためウィッグのカットと調整を何度も繰り返し、頭上の薔薇の髪飾りもしっかりと固定して、どのアングルから捉えても美しい立体感を保てるよう工夫しました。
撮影ロケーションには古典の趣が色濃く残るアンティークショップを選定。壁一面に広がる大鏡、精緻な彫刻が施された木製家具、黒電話、地球儀、そして壁を埋め尽くすアンティーククロックの数々が、画面の空気感を極限まで高めてくれました。この豪奢でクラシカルな世界観に寄り添うため、照明にはテーブルランプやサイド逆光など暖色系の光源を贅沢に取り入れ、重厚なシネマティックトーンを演出。暗部を深めに沈めることで、被写体の美しい輪郭をドラマティックに浮き彫りにしました。カメラマンさんの構図作りも秀逸で、鏡のフレームや額縁を手前に配して「絵の中の絵」のような多層構図を構築。金縁の肖像画と対峙するカットでは、シルエットと背景に舞う光の蝶のエフェクトを融合させ、次元を超越した魔術的な幻想美を紡ぎ出しました。古書が敷き詰められた机の上で両手を組み、顎を乗せてレンズを見据えるポーズでは、冷徹な品定めと蠱惑的な挑発を瞳に宿らせ、彼女ならではの底知れぬ魅力を表現しました。
撮影中最も難易度が高かったのは教会のシーンです。荘厳な儀式性と不穏な神秘感を表現するため、同一のカメラポジションで何パターンもの素材を撮影し、最終的に合成技術を用いて同じ装いのベアトリーチェが空間に複数佇むビジュアルを創出しました。両手を広げて十字架を仰ぎ見るカットの緊張感は、身体をしなやかに伸ばしつつ冷徹な面持ちを保ち続ける必要があり、体力的には過酷でしたが、完成した絵の圧倒的な迫力を目にした瞬間、すべての苦労が報われたと実感しました。また、廊下やアンティークショップの狭い一角では磁器や木製キャビネットとのスペースのせめぎ合いがあり、限られた光量の中での挑戦となりましたが、カメラマンの言寺さんの丁寧なディレクションのおかげで、納得のいく決定的な瞬間を数多く切り取ることができました。椅子に腰掛けてステッキを携えたカットでは、あえて脚を組むことでボーダーストッキングとスカートの豊かな重なりを自然に見せ、暖色ランプの光が上質なテクスチャを際立たせてくれました。白昼から夜遅くまで続いた長時間の撮影の中で、ネクタイの位置やスカートのプリーツの流れ、ステッキの角度に至るまで細部を何度も手直ししました。表現の隅々まで情熱を注ぎ込んだ今回の作品を、皆様に楽しんでいただければ幸いです。