『オナー・オブ・キングス』における嫦娥の「落星盞」スタイリングは、準備から最終的な撮影・現像に至るまで1か月以上の歳月を費やしました。原画の持つマテリアルの質感があまりに豊かだったため、衣装を手にした瞬間から「器に宿り、人と共に在る」というあの凛とした神秘的な冷涼感を、いかに実写セットで再現すべきか深く思考を巡らせました。
衣装の配色は王道の青・白・金を基調としており、特に腰元や腕にあしらわれた金色の金属甲冑は、ライトの下で安っぽく反射してしまわないよう事前に細やかな研磨や調整を重ねました。最も苦労したのは腕の周囲を巡る水波と氷晶のエフェクトパーツで、透明素材ゆえに強光下ではアラが目立ちやすいため細心の注意を要しました。幸いにも今回のスタジオセットは圧巻の完成度で、背後に浮かぶ巨大な幽蒼の満月、周囲に咲き誇る白い花々やタンチョウの模型が調和し、足を踏み入れた瞬間に仙侠風コスプレならではの浮世離れした幻想空間が広がっていました。
手元に掲げた「落星盞」は本シリーズ全体の視線を集めるセンターピースであり、青く澄んだ光を放つ蓮の花は内部にLEDライトユニットが仕込まれた特注の小道具です。撮影時はLEDの光源が平坦で不自然に見えてしまわないよう、カメラマンの@桃若夭之さんと何度も照射角度をすり合わせました。下から煽るように光を当てて顔立ちや胸元の金細工を優しく照らし出しつつ、背景の幽青な光景を壊さないライティングは極めて繊細な技術が試されました。
通常の靴を履かず素足で臨んだため、足首やつま先を飾る金色のアンクレットが下半身の重要なアイキャッチとなりました。床面には光を反射する銀色のマテリアルが敷き詰められており、腰掛けた際にはスカートの裾を自然に垂らし、足の甲をしなやかに伸ばすよう意識しました。こうすることで脚のラインをすらりと美しく見せつつ、全体として軽やかで俗世を離れた天女の気品を醸し出すことができます。背景には垂れ下がる真珠の連や透け感のある薄絹、奇岩が配されており、カメラをやや低めに構えてパースを活かすことで、人物と幻想的な背景を見事に一体化させました。
現像を担当してくださった@愚公愚公想摸鱼さんも多大な貢献をしてくれ、水波の質感や発光小道具のディテールに繊細なレタッチを施しつつ、過度な美肌加工を避けて布地の自然な織り目や光と影のグラデーションを忠実に残してくれました。本作は中秋節コスプレをテーマとしており、ちょうど祝祭の時期に合わせて公開できたため、この作品を通じて月宮の仙女が纏う静謐な美しさを皆様にお届けできれば幸いです。