今回の湛江漫画展でのイベント写真は、初音ミクのラビットホール キョンシーを担当しましたが、仕上がりの迫力は想像をはるかに超えるものとなりました。撮影場所には展示ホールの屋外にある巨大な金属トラス構造のエリアを選択。この硬質なインダストリアルの直線美が、キョンシー設定の持つダークな空気感と見事な化学反応を起こしてくれました。悪霊退散のダイナミックな動きを切り取るため、カメラマンの黄昏さんと綿密に打ち合わせを重ねました。
何よりの挑戦はアクションポーズの連続でした。逆さ吊りのようなカットでは、マットの上で後方へ身体を倒し、腹筋と体幹の力で脚を高く蹴り上げながら、視線にはキョンシー特有の冷徹な虚無感を宿さなければなりませんでした。黒ストッキングと艶やかなエナメルハイヒールが強い光沢を放つため、脚の筋肉を常に美しく引き締め、流れるようなラインをキープしました。ハイキックのポーズはさらに体力を要し、宙に浮いた瞬間に手元からお札を放り投げる必要があったため、舞い落ちるお札の軌道が被写界深度の中に美しく収まるよう、シャッターのタイミングを何度も検証しました。
衣装面では、ダークネイビーのボディスーツが身体のラインに吸い付くようにフィットし、金色のチャイナボタンと縁取りのパイピングが暗がりの中で上質なハイライトとして機能してくれます。ウィッグは立体的な毛束感を意識してセットし、水色からピンクへと移ろう毛先のグラデーションが激しいアクションの中でも型崩れしないよう、しっかりと空気感を含ませました。メイクは赤と青を交差させたアイメイクに加え、額に貼られたお札が最大のアイキャッチとなるため、見栄えと強度の両立を狙ってウィッグネットに両面テープで頑丈に固定しました。ボトムスの黒ストッキングに太ヒールのエナメルパンプスを合わせたスタイルは、キックや逆さのポーズをとる際、筋肉の力の入れ方に気を配るだけでなく、ヒールが衣装に引っかからないよう入念に立ち位置を確認しました。
仲間にお札を撒いてもらったカットは本当に試行錯誤の連続でした。黄地に朱文字のお札が作為的でなく、自然に風に舞うような軌跡を描く必要があったためです。風向きや投げる強さを何度も微調整し、宙を舞うお札をカメラマンさんが開放F値の前ボケとして活かすことで、視線を顔元へと鮮烈に引き込んでくれました。金属トラスが落とす影が画面に奥行きを与え、限られたイベント撮影時間の中で顔元に均一な光を回すため、建物の自然光をベースにレフ板で丁寧に光を補いました。
ポーズの構想から衣装ディテールの詰め、小道具との息の合った連携に至るまで、すべての工程に並々ならぬエネルギーを注ぎ込みました。混雑するアニメイベントの会場でこれだけの空間を確保し、高難度のアクション撮影を完遂できたことは、このボーカロイド作品への最高のオマージュとなりました。体幹の維持と身体のコントロールが極限まで試され、翌日は全身が筋肉痛になりましたが、完成した写真の迫力を前にすべての疲労が吹き飛びました。現像でも過度な美肌加工を避け、アクションが放つ生々しい緊張感とリアルな陰影の質感を大切に残しています。