『チェンソーマン』の夜景プール撮影では、照明設備のある屋外プールをロケーションに選びました。夜は水温が低く、水に入る前の心の準備に少し時間がかかりました。水中での撮影は陸上とは全く異なり、最大の試練はウィッグと衣装が水を吸って重くなることでした。レゼの衣装は普段なら軽やかですが、水に入ると水の抵抗が非常に大きく、水中で横向きの防御ポーズを取りながら表情を保つのはかなりの体力を消耗しました。
画面中央に広がる水しぶきは、2人で呼吸を合わせて作り出したものです。デンジ役のパートナーと水中で水を跳ね上げる力加減を何度も練習しました。水しぶきが大きすぎると顔が隠れてしまい、小さすぎると迫力に欠けてしまいます。カメラマンさんはハイスピードシンクロ(高速ストロボ)を駆使して、その一瞬を見事に捉えてくれました。水しぶきが空中でキラキラとした光の粒となって静止し、背後の水面の反射も相まって抜群の空気感を醸し出しています。撮影中は十数回も水を掛け合い、何度も目に水が入りましたが、水しぶきが舞い散る臨場感を捉えるためには必要なプロセスでした。
夜景プールの撮影において、ライティングは極めて重要です。今回カメラマンさんは2台のストロボを用意し、1台は水面に当てて水しぶきを照らし、もう1台は背後から当てて輪郭を際立たせるリムライトとして活用しました。夜の水面は非常に暗く、光量が足りないと水面が真っ暗に潰れてしまいますが、事前に光の位置をテストしたおかげで、水滴の澄んだ透明感を保つことができました。動的なスナップ撮影であるため、デンジ役との連携が鍵となり、水しぶきが舞い上がった瞬間に私が合わせられるよう、彼の動作を半拍遅らせる約束をして挑みました。
ポージングに関しては事前にたくさんの案を考えていましたが、実際の水中では動きが大きく制限されることを実感しました。水の抵抗だけでなく、プールの底のタイルが滑りやすく転びそうになったため、足元の滑りにも警戒が必要でした。バランスを保つため、水中で常に脚の筋肉に力を入れて踏ん張りました。カメラマンさんの誘導も的確で、「もう少し角度をつけて」「少し顎を引いて」と声をかけてくれました。水の屈折で顔が歪んで見えやすいため、少し顔を上に向けることでベストアングルを探りました。こうした実写ロケーションでの撮影は、スタジオでグリーンスクリーンに向かうよりも遥かに没入感がありました。
衣装やメイク面では、ウィッグが水で崩れやすいため、入水前にハードスプレーを念入りに吹きかけました。首元のチョーカーは水中で少し締め付け感がありましたが、キャラクターの再現には欠かせないためしっかりと着用しました。アイメイクはウォータープルーフタイプを使用したため、撮影中も崩れずに済みました。撮影全体で1時間以上水に浸かっていたため、手足の指がすっかりふやけてしまいました。後処理のレタッチでは主に夜景のクールな寒色トーンを再現し、過度な変形加工は控えました。水しぶきのリアルな粒状感を残すため、過剰な肌の美肌補正も避けています。撮影終了後は全員で急いでバスタオルにくるまりました。写真を見返すと、ハードな撮影ではあったものの、実景ならではの空気感や動的な緊張感、そして作中のレゼが持つ独特の距離感がしっかりと表現されており、とてもやりがいのある撮影となりました。