今回の『新世紀エヴァンゲリオン』綾波レイの撮影では、戦闘服(プラグスーツ)の質感表現と、キャラクターの感情の機微を捉えることに全神経を注ぎました。白を基調としたこのパイロットスーツはラバーやラテックスを思わせる高光沢素材で作られており、身体に吸い付くようにフィットする反面、伸縮性がほとんどありません。理想のビジュアルをカメラの前で成立させるため、出発前から食事制限を行ってボディラインをスーツの型紙に合わせ、可動域の狭い衣装の中で自然なポーズを取れるよう事前に練習を重ねました。非常にタイトな仕立てのため着脱には2人の介助が必要で、内側にベビーパウダーをたっぷりと塗り込んで皮膚と生地の張り付きや摩擦を防ぐなど、入念な対策を施しました。
ウィッグには淡い水色のショートボブを選び、パッツン前髪にほんの少し無造作な毛先の散らしを入れてセット。メイク面では赤いカラコンと透明感あふれる寒色系ベースメイクを核に据え、チークやアイシャドウを極限まで抑えることで、綾波レイ特有の浮世離れした静謐な透明感を際立たせました。首元まで覆うハイネック構造のため、襟元にファンデーションが移らないよう首のパウダー定着にも細心の注意を払いました。白いタイトスーツは身体のラインをダイレクトに拾うため、インナーでの補正も徹底。頭部の白いインターフェースヘッドセットもヘアピンでしっかりと固定し、首を振っても位置がブレないようホールドしました。
当日のスタジオでは濁りのない強烈なホワイトライトを使用し、白ホリの空間とハイキーなライティングによって、スーツにあしらわれたメタリックな接続パーツやグリーンのウエストマークを澄み切った質感で浮かび上がらせました。高光沢生地はレンズ越しに白飛びのテカリが生じやすいため、カメラマンの陣雨さんがアングルごとに照明角度を緻密に調整し、ソフトボックスやレフ板を駆使して強すぎるハイライトを均一にならし、衣装本来のカッティングラインを美しく残してくれました。ポーズを変えるたびにアシスタントさんがウェットティッシュでスーツ表面を拭き取り、指紋や微細な埃を丹念に除去してくれました。
ポージングのディレクションにおいて、手首や足首の装甲パーツが強固に固定されているため、身体を捻ったり前屈したりする動作は極限まで制限されました。そのため体幹の筋力をフルに使って背筋を凛と伸ばし、ブレない直立の美しさを意識しました。硬質なグローブをはめた手元の所作にはかすかなメカニカルな硬質さが宿り、その身体的な拘束感こそが、エヴァのパイロットという過酷な運命を背負うキャラクターの精神状態へと瞬時に没入させてくれました。原画が持つ、どこか無機質でありながら研ぎ澄まされた力強さを宿す立ち姿を再現するため、正面や側面の直立カットを数多く撮影し、過剰なアクションに頼らない静の迫力を追求しました。胸郭を安定させ呼吸をコントロールすることで、プラグスーツの流線型を一切崩さずにシャッターを受け止めました。
この衣装での撮影は何よりも持久力の勝負でした。生地に通気性が一切ないため合間の水分補給は不可欠であり、着脱時のパウダー補給を怠れば照明の熱気で熱中症になりかねない過酷さがありました。しかし完成した写真に宿る艶やかな光沢と洗練された反射のテクスチャを目にした瞬間、注いだ体力のすべてが報われたと感じました。今回は作為的なセクシーさを誇張するのではなく、衣装自体のシャープなカッティングと光と影の陰影によって美しいシルエットを際立たせることにこだわりました。『新世紀エヴァンゲリオン』が放つミニマルで冷徹なSF美学は私自身心から惹かれる世界観であり、豊かな表情を作らずとも、佇まいと眼差しだけで雄弁に物語を語ることができます。今後も様々なバリエーションの戦闘服に挑戦し、光を活かしたさらなる表現を探求していきたいと思います。