BW2026の『原神』ブース会場は冷房がしっかり効いていましたが、これほど重厚で緻密な衣装を纏っていると、やはりじっとり汗ばんできます。今回の「ぜんまい仕掛けの貴婦人」スタイリングの再現ポイントは、上半身とウエスト周りの造形美に集約されています。特にゴールドの透かし彫りコルセットは、身体のラインに完璧にフィットさせるため内側に硬質ボーンを仕込んで補強し、立ったり座ったりしても型崩れしない強度を確保。胸元の立体的な白い蝶ネクタイは面ファスナーとスナップボタンの二重構造で固定し、混雑する展示エリアの移動でも脱落しないよう万全を期しました。
最も手がかかったのは両腕のアームスリーブです。独立したセパレート仕様の黒いスリーブに、白、黒、そして星空の地紋が入った3種類の異なるテキスタイルによるフリルを幾重にも重ねました。1層ずつ丁寧にアイロンをかけて立体感を定着させないと、腕を通した際に安っぽい布のようにへたれてしまい、重厚な陰影が出ません。『原神』ブースのクラシカルで華麗な世界観に寄り添うため、カラコンには鮮烈なライトブルーを選定。強い照明の下で、球体関節人形のような無機質で透き通るような眼差しを追求しました。
ウィッグに関しては、ぱっつん前髪と両サイドの姫カットの毛先を丸一晩かけてカット。後頭部のロングツインテールには見えないネットとハードスプレーを仕込み、終日の撮影でもアホ毛や乱れが一切出ないよう配慮しました。赤いレザーソファに腰掛け、金縁のティーカップを構えるポーズでは、中身は空っぽながらも優美な所作を崩さないよう、手首の角度に絶えず神経を集中。白レースのガーターストッキングも大がかりな仕掛けで、ずり落ちを防ぐためにスカートの下にクロス状の滑り止めストラップを幾重にも張り巡らせました。会場でしゃがんだり立ち上がったりする交流において、安全対策は最優先です。
会場で「木偶様」を愛してくださる皆さんの熱気と笑顔を間近に感じられ、本当に胸がいっぱいになりました。イベントから10日が過ぎた今でも、写真を見返すたびにあの日の興奮が鮮明に蘇ります。仕事終わりに少しずつ時間を捻出して現像作業を進めていたため時間がかかってしまいましたが、本日ようやく納得のいくベストアングルを仕上げることができました。
衣装の生地についても触れておくと、スカートの表地には上品なパール光沢を放つサテンを使い、中間層にはゴールドのラメが散りばめられたプリーツ生地、最内層には純白のレースを配置。3層に重なる裾の長さのバランスは3回ほど調整を重ね、ボリューム感を出しながらも脚の美しさを覗かせる絶妙な黄金比を導き出しました。コルセットの赤い宝石はアクリル素材に金色の縁取りを施し、ブースのライティングを浴びて艶やかな輝きを放ちます。深紅のソファに腰掛けた瞬間、衣装の白・黒・赤のカラーコントラストが鮮やかに際立つ絵作りとなりました。
もう一つの難関は会場のライティングでした。大型イベント特有の真上からのトップライトは顔の立体感を平坦にしてしまいがちです。そこでベースメイクに繊細なハイライトを仕込み、アイメイクの陰影を深めに入れることで、ブルーのカラコンとともにレンズ越しでくっきりとした彫りの深さを演出。大げさなアクションをあえて控え、静けさと機械仕掛けの気品を湛えたストイックな佇まいを意識しました。金縁をあしらった白磁のティーカップも、手に取った時の重厚感が上品なアクセントになっています。
首元の仕立てにも工夫があり、大ぶりの黒レース製チョーカーカラーを綺麗に自立させるため、内側に見えない芯地を内蔵。ウエストの砂時計ラインは本格的なコルセットで限界まで締め上げており、撮影後に脱ぐたびに大きく深呼吸するほどのホールド感でした。
ポージングの所作にも美意識を徹底。白の手袋をはめた手でカップを持つ際は、手首がだらしなく折れないよう凛とした直線を保ちました。座りポーズでは太ももとふくらはぎの角度を美しい直角に維持し、スカートの落ち感と調和させるため、腹筋と体幹を常に引き締め続けました。赤いソファに映える白ストッキングの上質なテクスチャーは肌の透明感を引き立て、下半身の視覚的重心をしっかりと安定。ブースのカーペットを踏みしめる赤底のエナメルシューズが、軽やかに広がるドレスの裾と完璧なバランスを取ってくれました。
『原神』ブースで過ごした時間は本当に特別で、木偶様に会いに来てくださったすべての皆様に感謝申し上げます。小道具も衣装パーツもすべて一点物のオーダーメイドで仕立て、設定画の細部をミリ単位で拾い上げました。会期中は毎晩帰宅後にパーツを丁寧に仕分けし、型崩れを防ぐケアに追われましたが、ステージ上でこのクオリティを形にできたことで、すべての苦労が心地よい達成感へと変わりました。遅ればせながらお届けするこの写真から、会場の熱気と世界観が皆さんに伝われば幸いです。