「さくらちゃんを出すたびに100枚はボツになる」というのは決して冗談ではありません。傾斜のある草原でのジャンプは想像を絶する難易度でした。本日この写真たちを整理しながら、撮影当日に草地の斜面で何度も跳び続けた息苦しさを思い返し、体幹が一段と鍛えられたような気さえしています。今回のロケーションは水辺の傾斜した芝生を選定。夕暮れの逆光が織りなす幻想的な情緒を捉えることが当初の目的でしたが、いざ実践してみると、斜面の足場と重厚な衣装の組み合わせは動作への負荷を跳ね上げました。
『カードキャプターさくら』を象徴する王道のバトルコスチュームは、見た目の華麗さに反して身体の自由が大きく制限されます。ピンクのアウタースカートは広大な面積を誇るだけでなく、内側には極めてボリューミーな白いレースパニエが仕込まれています。平地でのジャンプであれば腹筋の力でスカートの広がりを制御できますが、傾斜地では踏み切りの接地面が水平でないため、着地時のバランス崩壊のリスクが常に付きまといます。スカートが不格好な塊に潰れてしまわないよう、そして背中の白い翼のプロップが不自然に浮かないよう、跳躍した瞬間に背筋をピンと伸ばして両脚を引き締める必要がありました。その結果、表情が強張ったり手にした封印の杖が傾いたりしがちで、10枚連写して2枚使えれば御の字という過酷な現場でした。
カメラマンの@瓜葛 さんは奇跡的な滞空の瞬間を切り取るべく、終始草原に腹ばいになって超ローアングルから煽りで構えてくれました。このアングルは白ストッキング(白いオーバーニーソックス)と脚のダイナミックなラインを美しく見せる上で絶大な効果を発揮する一方、被写体側にも一切の気の緩みを許しません。所作のみならず、今回着用した白ストッキングと赤いレースアップヒールも草原環境では大きな試練となりました。細いヒールは柔らかい土へと容赦なくめり込み、ストッキングも鋭い草葉の摩擦による伝線の危機に絶えず晒されていたため、ジャンプのたびに履き口のレースや靴紐の結び目を丁寧に直す作業が欠かせませんでした。
何より過酷を極めたのはセレクト作業です。撮影データの半分以上は目を瞑ってしまっていたり、強風でウィッグが不規則に乱れたりしていました。奇跡的に崩れを免れたカットも、顔に落ちる影が強すぎたり構図の余白が広すぎたりと課題が山積み。これらを救出するため、レタッチ工程では光の階調設計に全霊を注ぎ込みました。とりわけ逆光がもたらす光輪の表現において、夕日の黄金色の温かみをしっかりと宿らせつつ、顔立ちの露出を均一に持ち上げ、衣装の縁を走る金色のパイピングを潰さないよう、ハイライトとシャドウの緻密な部分補正を敢行しました。
作品を生み出すまでの道のりは過酷を極めましたが、これこそがコスプレという表現が放つ唯一無二の魅力です。キャラクターを具現化するために注ぎ込んだすべての体力と熱量は、完成した写真を目にした瞬間、至上の達成感へと昇華します。派手な合成エフェクトに頼ることなく、あの一瞬に宿った本物の躍動感と夕日の奇跡を切り取ることに全力を注ぎました。奇跡のワンカットのために何度もシャッターを押し続けてくれたカメラマン仲間に心からの感謝を。ボツの山から救い出したこれらの写真は、私たちが分かち合った情熱と歓びの証そのものです。