イベントの時間が午後3時を回る頃には、私の手にあった重みは、当初設定していた撮影用小道具からガチの生命維持物資へと変わっていました。数々のイベントに出没し、次元の狭間を行き来するベテランメイド長兼なんちゃって万能プロデューサーの私には、痛感している真理があります。それは、エリー都でどれだけ華々しく過ごしていようと、現実世界の空腹感だけは絶対に抑えられないということ。この自分の顔よりも大きな焼きパンと、淡いブルーの涙シール2本こそが、今回の「狡兎屋倒産」というイベントネタへの私の回答です。
投稿には「キャラ崩壊(OOC)ごめん」と添えつつ「にこボスはキャラ崩壊なんてしない」と強調しましたが、実は狡兎屋の中核業務とは、混乱の中でどんな些細な金儲けや食い扶持のチャンスをも逃さないことです。だからパンを丸かじりするのは決してキャラの設定に反しておらず、むしろ「ない袖は振れぬ」というリアルな切なさを引き立てています。実際のところ、本物のにこボスだって、パンをかじっているところを他のプロキシに笑われたら、なけなしの活動資金をぎゅっと抱きしめ、表では平然を装いつつ陰で金運を祈るに違いありません。
にこをコスプレする以上、ヘアスタイルにはかなり気合を入れました。ピンクのトップに鮮やかなイエローの大きなリボン、そしてロイヤルブルーのトップスという組み合わせは、会場内でも抜群の存在感を放ちます。ブースの前を通るたびに「髪色が忠実で可愛い」と褒められましたが、この2つの巨大な黄色いリボン飾りと重いウィッグを支えるため、首と肩がどれほど悲鳴を上げていたかは誰も知りません。しかしこれもコスプレイヤーの日常であり、プロ意識の一部です。この衣装を纏ったからには、どんなピンチに直面しても、自信満々でちょっぴりワイルドに立ち向かうにこの気概を保ち続けなければなりません。
今日一番面白かったのは、透明なビニール袋に入ったパンで顔の下半分を隠し、目元だけを出した瞬間でした。撮影してくれた友人が、「世知辛い世の中にゃん……」と言わんばかりの絶妙な表情を見事に捉えてくれました。あの目立つ青い波線の涙シールも相まって、まるでギャグ漫画のワンシーンのような一枚になりました。会場には本格的な機材を構えたカメラマンや見物客がたくさんいて、最初は巨大な限定グッズでも掲げているのかと思ったら、近づいて見たら本物の香ばしい焼きパンだったという……。このギャップこそが、ネタコスプレならではの最高に楽しい部分です。
イベント会場といえば、いつもこのようなインダストリアル感あふれる広い展示場やホールで、背後の鉄骨構造とグレーのタイル床が見事な幾何学的背景を作り出してくれます。だからこそ、鮮やかなコスチュームを着たキャラクターがカメラの前に立つと、強烈な視覚的コントラストが生まれます。そんな空間で、(シールですが)涙を拭うフリをしながら「どう上品にパンをちぎって食べるか」に悩むという奇妙なギャップこそ、リアルイベントで私が一番大好きな体験です。
それこそが、私の思うにこの魅力でもあります。彼女は高潔で完璧な神様ではなく、複雑怪奇な状況の中で電卓を叩き、活動資金に頭を抱えながらも、最後にはみんなを引っ張って乗り越えていくボスです。今回私は完璧な戦闘ポーズだけを追うのではなく、物資が底をついた時のリアルで生き生きとした一面を再現したかったのです。原作では圧倒的な実力と決断力を持つ彼女ですが、イベントの和やかな空気の中では、ご飯を食べて体力をチャージするお茶目な女の子として表現する方が、ただカッコつけるよりもずっと愛らしいと思います。
こうした自己満足のコスプレは、長時間の移動や準備の疲れを吹き飛ばし、たくさんの心の充実感を与えてくれます。巨大な会場で重い装備を身につけながら人混みを歩き、ネタが通じる仲間と目が合ってニヤリとしたり、友人にスマホで情けない瞬間を激写されたりする時の幸福感は、純粋でかけがえのないものです。単に静止画を型通りに模倣するのではなく、自分自身の姿とテンションを通して、いまこの瞬間のリアルの文脈でキャラクターに生き生きとした命を吹き込むことこそが目的なのです。
結局このパンは最後まで食べきれなかったのですが、館内の室温がちょうどよかったため、ビニール袋に包んで胸元に抱いていたら、簡易カイロのようになってくれました。そんな少しシュールな日常こそが、アマチュアながらも全力なコスプレイヤーとしての私のリアルな心情です。ファンのみんなは『ゼンレスゾーンゼロ』のにこが颯爽と活躍する姿が好きですが、オフラインでこうしてクスッと笑えるネタを届けられるのも、平行世界への素晴らしいトリップ体験だと思っています。