「このチェス盤のルールは、私が決めるわ」
『東方Project』のパチュリーといえば、誰もが真っ先に思い浮かべるのが引きこもりがちな喘息持ちの魔法使いと、禁書がひしめく紅魔館の大図書館でしょう。実は「一局指さない?」という言葉は完全に原作の台詞というわけではありませんが、深遠なルールを掌握し、どこか物憂げで距離感を保つ彼女のキャラクター性と見事に合致しています。今回のグラビアは、そうした緻密な論理を秘めた魔女の雰囲気を具現化することをテーマにしました。
メイクとスタイリングについて語りましょう。ウィッグは彩度を抑えた淡いパープルを選び、ゆったりとした編み込みを施しました。最大のポイントは前髪の処理です。パチュリーの公式設定の前髪はやや厚めで隙間がありますが、特写(アップ)でフェイスラインをすっきり見せるため、厚みを残しつつ少しシースルーにカットしました。これが誇張された黒紫の大ぶりなレースボンネット帽子と見事な調和を生み出しています。
帽子にあしらわれた多層のブラックレースと深紫のベルベット生地は、事前準備で最も手工芸に時間を費やした部分です。1つの帽子でヒダの縫製に3時間近くかかり、グルーガンと針糸で1つひとつのシワを固定しました。最も気に入っているのは、垂れ下がる細いチェーンと星のチャームです。撮影中に頭を少し揺らすだけでチェーンが触れ合い、清涼感のある美しい音を奏でます。これらのチェーンが全体の「点睛の筆」となり、ダークなゴシック風(Gothic style)の中に愛らしいファンタジー要素を溶け込ませてくれました。
メガネも今回大変気に入っている小道具です。伝統的な厚底メガネではなく、鼻あて部分に細い銀色金属線を用いたリムレス(無枠)デザインを採用しました。このデザインの利点はアイメイクを最大限に魅せられることです。淡いブルーのカラコンに濃いブラックのアイラインとダーク系アイシャドウのグラデーションを合わせ、瞳に集中力と透明感を同時に宿しました。メガネの両脇には小さなビーズのチェーンが付き、耳や頬の脇に垂れて非対称な繊細美を醸し出し、小顔効果も発揮してくれます。
首元の黒レースチョーカーもこだわりが詰まったデザインです。中央に紫の水滴型宝石を配し、下に細いチェーンを数本垂らしました。ハイライトを当てると宝石が美しい輝きを反射します。黒レースチョーカーと黒のオフショルダー衣装の相性は抜群で、パチュリーらしいクラシカルでゴシックな聖職者風の気品を保ちつつ、デコルテや肩のラインを覗かせて重厚な衣装にほどよい抜け感(呼吸感)を与えました。指にはシンプルなシルバーリングを指し、主張しすぎず髪を撫で下ろす動作で上品なアクセントとなります。
撮影ロケーションはイベント会場裏の臨時スタジオブースです。天井に設営された撮影用ライトやアンブレラが背景に見えます。シンプルな空間ですが、カメラマンさんのライティング技術が実に見事でした。キャッチライトと顔のハイライトを鮮明に効かせることで、立体的な輪郭を見事に浮き立たせてくれました。ハイライトによってマットパープルのウィッグにも自然な艶が生まれ、髪質が非常に滑らかに映し出されています。周りは参加者やスタッフの行き交う音が響いていましたが、光の最適な角度を見つけた瞬間、心がすっと静まり返りました。
雰囲気作りに関して、パチュリーというキャラクターの最大の特徴は「ギャップ」にあると考えています。外見は病弱で物憂げですが、絶大な破壊力を秘めた高度な魔法を操ります。そのため撮影時は、頬や耳後ろのほつれ髪に手を軽く添え、表情はできる限り淡淡としたニュアンスを意識しました。無理に笑わず、かといって冷淡になりすぎず、「見えているけれど興味はない」という物腰を表現しました。淡いピンクのリップメイクも、清冷な印象を和らげて少しのお茶目さを添える工夫です。
全体として、チェーンの重みや大きな帽子を被り続ける半日のイベント撮影(Convention photography)は頚椎にこたえましたが、スタジオの光影とこだわり抜いた小道具が見事に噛み合い、クオリティの高い二次元(2D)世界観を表現できました。このスタイリングは着こなしが難しいと思われがちですが、ウィッグの色味と肌色のコントラストを合わせ、細部のアクセサリーを散りばめることで、知性あふれる魔女の佇まいを完璧に再現できます。盤上の勝負は未だ途上ですが、レンズが捉えたこの一瞬の勝敗は、すでに決したと言えるでしょう。