今回の写真の核心的なインスピレーションは、『竹取物語』において輝夜姫(かぐやひめ)が月宮へ帰る前の、ある静寂の瞬間から得たものです。東方Projectの蓬莱山輝夜をモデルにこのロケーション撮影を行うことは、実はかなり前から準備を進めていました。キャラクターの雰囲気が大好きだからというだけでなく、実際の景色の中で、現実とも幻ともつかない幻想郷の世界観を再現したいと願っていたからです。
衣装のコーディネートについては、今回はこの薄ピンク色の広袖トップスを選びました。生地は軽やかで通気性の良いシフォンと複合絹糸(コンポジットシルク)で、襟元和肩の部分にはあえて何重にも重ねたプリーツ加工を施し、首元から肩にかけてのラインを美しく見せています。袖口や裾にあしらわれた金色の太陽、月、そして祥雲(しょううん)の模様は本格的な刺繡で、光が当たると繊細な輝きを放ち、深みのある赤褐色の刺繡ロングスカートと合わさることで、視覚的に落ち着きがありながらも躍動感を失いません。頭のサイドに飾った蝶の流蘇(タッセル)髪飾りもスタイリングのポイントです。輝夜姫の持つ、清冷でありながらどこか気品漂う特質に合わせるため、透明感のある質感のタッセルを選び、歩くたびにかすかに揺れるようにしました。
手に持っているこの枯れ枝とカラーボールの小道具は、撮影の際に最もこだわった部分の一つです。一般的な造花ではなく、あえて形が自然で枝が曲がった本物の枯れ枝を選び、その先端にゴールド、ブルー、レッド、グリーンの鮮やかなガラスボール(琉璃玉)をあしらいました。この小道具は、自然のうつろいを感じさせるわび寂び(枯寂感)を持ちながらも、どこかキラキラと輝く魔法のようなオーラを放ち、逆光の下で魅惑的な光輪を屈折させます。これは、蓬莱山輝夜が持つ、永遠亭のどこか非現実的なテクノロジーと古典が交錯する雰囲気にぴったりと呼応しています。
今回の実景は、細部まで非常にこだわり抜かれた人工の和風庭園で撮影しました。竹垣、古風な石灯籠、木製の引き戸、正式には地面一面に広がる青苔と白い砂利が、静寂な空気感を見事に再現しています。まるで雪のように咲き誇るピンクの花の木々や、地面にあえて散りばめられた落花、そしてあの柔らかく低彩度なライティングが相まって、落英繽紛(花びらが舞い散る)の唯美的な世界観を作り出しました。特に5枚目の写真のような、画面全体に広がる白みがかったソフトフォーカス効果と紫色の霧状の光漏れは、人物と環境に現実離れした朧げな感覚を与えています。
これらの自然な空気感を切り取るために、カメラマンの@Ankhol雨宮先生とは息の合ったコラボレーションができました。先生はこうした柔らかな光の逆光の瞬間を捉えるのが非常に得意で、大口径レンズによる浅い被写界深度を利用して、前ボケと後ボケの二重のボケ味を作り出しています。構図を決める際、先生はよく入り口の木枠や前ボケした花枝を遮蔽物(前景)として利用し、まるでキャラクターが誰かに覗き見されている秘密の庭園に佇んでいるかのような演出をしてくれました。撮影中はあえてガチガチにポーズを固めるのではなく、スナップ写真の手法を多用し、横顔が見せる物憂げな雰囲気や、花を見下ろす時のどこか清冷でミステリアスな眼差しをキャプチャしていきました。レタッチ(現像)の段階でも過度な色付けはせず、この紫がかったグレーとピンクホワイトが織りなす質感を残し、部分的な光漏れや光輪を組み合わせることで、写真全体に空気感(透明感)を持たせました。これらのディテールを通じて、永遠亭で果てしない月華の冷たさを身に纏うお姫様の姿を古風コスプレとして再現できていれば幸いです。