未完のまま保留となっていたサンドローネの撮影を、今回ようやく完遂することができました。諸事情で一度は棚上げになっていた企画だっただけに、この復活戦をやり遂げられた達成感は格別です。衣装には息をのむほど細やかな意匠が凝縮されており、幾重にも重なる波打つフリルと重厚な金属パーツが相まって、身に纏うだけでずっしりとした手応えを感じます。傀儡様ならではの陶器人形のような精緻さと近寄りがたい冷涼な気品を表現するため、ウィッグのセットだけで2時間を費やし、金髪のウェーブヘアが自然かつ立体的な束感を描くよう毛筋の1本まで丹念に作り込みました。
撮影ロケーションにはヴィンテージの趣漂う書斎ブースをセレクト。深みのあるダークウッドの本棚や本革張りのソファチェアは、まさに『原神』におけるファデュイの執行官のために誂えられたかのような重厚さを醸し出しています。黒・赤・白・金の豪華絢爛なドレスに合わせ、アイメイクでは彫りの深さをシャープに強調し、透き通るブルーのカラコンを装着。サンドローネ固有のミステリアスな神韻を捉えるべく瞳のニュアンスにこだわりました。手にした巨大な鍵のプロップは想像以上の重量があり、片手で掲げながらポーズを静止させる間、腕の筋肉と体幹を限界まで緊張させて格闘。それでも画面に圧倒的な緊張感を宿すため妥協なく角度を追い込み、仕上がったプレビューを目にした瞬間、すべての苦労が報われたと実感しました。
端正に腰掛けて紅茶を口に運ぶ所作や頁をめくるカットに加え、ソファに身を預けたアンニュイな脱力ポーズにも挑戦。書斎を満たす暖色アンバーの間接照明が、テーブルに置かれた3段のアフタヌーンティースタンドや銀細工のティーポットを照らし出し、気だるくも神秘的なサロンの空気を一瞬にして立ち上らせました。ファンコミュニティでは親しみを込めて「威嚇する仔猫ちゃん」などと揶揄されることもありますが、私の中での傀儡様は、常に圧倒的な威厳と底知れぬエレガンスを湛えた孤高の存在です。この装いに恥じぬよう、レンズを射抜くような冷徹な眼差しから、本を見つめる静謐な横顔に至るまで、カメラマン様と入念に意思疎通を図りながらサンドローネの多面的な魅力を引き出しました。
衣装の仕立てからプロップの造形、そして空間美術との調和に至るまで、全行程が体力勝負でありながら極めて充実した創作時間となりました。コスプレという表現を通じて、『空月の歌』の叙情を背景に生きる原神傀儡の姿を具現化できた喜びは何物にも代えがたいものです。撮影終了の合図とともにソファへ倒れ込むほど体力を使い果たしましたが、液晶に浮かび上がる物語性豊かなカットの数々を目にし、流した汗のすべてが最高の作品へと昇華されたことを確信しました。