今回の撮影テーマは「早く退勤したい」という、極めてリアルで身近な日常のワンシーンです。この設定に寄り添うため、あえてスーパーのバックヤードに面したガラス窓の前をロケ地に選びました。隅々まで作り込まれた撮影スタジオよりも、生活感がにじむ少しひっそりとした街角のほうが、自然と感情移入しやすかったりします。身にまとった衣装は今回のスタイリングの要です。ショート丈の黒レザージャケットはタイトな仕立てで、ジッパーを開けてインナーの白のタイトなミニワンピースを覗かせました。ジャケットの裾にあしらわれたベルトが首元の黒チョーカーと呼応し、視覚的なアクセントになっています。足元に選んだ白の太ヒールミドルブーツは歩きやすく、シャフトのメタルバックルが無骨でクールなスパイスを効かせてくれます。全体のカラーバランスを整えるため、素肌が自然に透ける黒ストッキングを合わせました。このモノトーンのレザー服と黒ストッキングに、ダークレッドの赤髪スタイルが加わることで、灰白色の敷石の上で鮮烈なコントラストが生まれました。
1枚目のカットではガラスの反射を活かしました。金属製のドアノブの横に横向きで佇み、視線を遠くへ投げかける構図です。ガラスに映り込む像と実像のシルエットが重なり合い、背後の街並みと相まって都会特有の孤独感を強く醸し出しています。カメラマンさんからは笑いすぎず、少しぼんやりとした脱力感と疲弊したニュアンスを保つよう指示を受けました。2枚目はしゃがみ込んだアングルです。ガラス窓の前にしゃがみ、片手をカメラに向かって差し出すポーズは現場でのアドリブでした。ハイアングルからの俯瞰ショットが、私とガラス窓、そして店内の温かな照明を一角に収め、室内のあたたかみと外のレザー姿の冷たさが絶妙な対比を描き出しています。
物語性のあるストリートスナップにおいて最も難しいのは、ポーズを作ることではなく「退勤後」特有の気だるく緩やかな空気感をどう演じるかです。気取りすぎてもいけませんし、だらしなく見えすぎても崩れてしまいます。試行錯誤を重ねた結果、しゃがみ込んだりガラス戸に無造作にもたれかかったりする仕草が一番自然だと気づきました。当日は風が強く、赤髪が少し乱れてしまいましたが、一日中働いて身だしなみすら気にしていられないリアルな心情とぴったり重なりました。画面には写っていませんが、設定としては仕事終わりに同僚や友人と裏口で少し立ち止まり、雑談しながら一息ついているようなショートフィルムのワンシーンを演じている感覚でした。今回の仕上がりは過度な肌補正を避け、ストリートならではのざらりとしたリアルな質感を大切に残せて非常に満足しています。今後もこうした都市の日常を切り取る写真企画があれば、様々なロケーションで挑戦してみたいです。仕事終わりのふっと肩の力が抜けるような心地よさを感じていただけたら嬉しいです。