天気予報で雨マークを見た瞬間、真っ先に頭に浮かんだのは「あの透明レインコートがようやく出番を迎える」ということでした。いざ撮影現場に足を踏み入れると雨脚は弱かったものの、普段は賑やかな子どもたちの姿が消え去り、金属製のすべり台に雨粒が当たる静かな音だけが響いていました。誰にも邪魔されないこの貸切感は、ポートレート撮影にとってまさに至高のシチュエーションでした。
ピンクの大ぶりなリボンを結んだセーラー服は王道のクラシックスタイルで、濃紺のプリーツスカートも絶妙な丈感。スタイリングに奥行きを持たせるため、足元には黒のオーバーニーソックスと黒の太ヒールローファーをセレクトしました。アウターに羽織った半透明の白い透明レインコートこそが今回の装いの魂であり、インナーの制服のディテールを隠すことなく、その微かな霞んだテクスチャが画面全体に天然のソフトフィルターのような美しい階調を添えてくれました。ただ率直に言えば、写真映えする一方で内側は非常に蒸れやすく、少し動くだけで汗ばんでサウナ状態になる過酷さもありました。
雨に濡れてしっとりと光る金属製すべり台に慎重に腰掛け、多彩な座りポーズを模索。リラックスしつつも情緒あふれる少女の佇まいを表現するには、見た目以上に体幹の筋力を要しました。脚を交差させたり前へと伸ばしたりする所作では、太もものラインの美しさとスカートの裾の自然な落ち感に気を配り、覗く絶対領域がダークトーンの制服の重さを軽やかに中和してくれます。太ヒールで滑りやすい遊具の上を移動しながら表情を維持し、カメラマンさんも濡れた金属面の強烈な反射光を避けつつ光量を確保するため、下からのアングル探しに心血を注いでくださいました。
撮影機材に関しては、今回はFUJIFILM X-S20ボディに往年の名玉であるXF23mm F1.4とXF35mm F1.4を装着して臨みました。普段はビルトロックスの最新AFレンズのキレ味に慣れているため、ふと思い立ってノスタルジーに浸るべくXF第1世代のオールドレンズへ回帰。しかし実際に使ってみると、まさに「贅沢に慣れると質素に戻るのは難しい」を痛感しました。開放F1.4では描写が甘くソフトで、逆光気味のシーンではパープルフリンジが顕著に発生。ネット上でよく囁かれる「ボケ味の情緒」を期待してRawデータを見つめたものの、現代レンズのシャープネスに慣れきった私の目には特別な魔法を見出すことは難しく、時代の進化を実感する結果となりました。
後半はカフェスペースの屋内へと移動。濡れたレインコートを脱ぎ去り、ハイスツールに腰掛けて苺が乗ったアイスドリンクを注文しました。柔らかな室内の間接光の下、背景の生花と窓辺の光に包まれながら、カウンターの上に無造作にカメラを配置。ストローでドリンクを口にする仕草は最も作為がなく、カメラにふと視線を向けるだけで、雨の屋外から温もりある空間へと逃げ込んだ安らぎが素直にフィルムへ刻まれました。ロケーション撮影とはまさにこうした予測不能な天候との対話であり、不意の降雨や無人の遊園地といったハプニングこそが写真に豊かな物語性を吹き込んでくれます。JK制服とレインコートの組み合わせを完結させ、黒のオーバーニーソックス、雨具、遊園地、そして温かな室内という多彩な空気感を1つの作品に凝縮できた納得の撮影記録となりました。