今回のキリコの衣装と小道具を手にした瞬間、私の脳裏に真っ先に浮かんだのは「絶対に廃墟感あふれる工業地帯のロケーションで撮りたい」という強い衝動でした。ストリートの喧騒と近未来のサイバーパンクな空気感を具現化するため、セットの構築には並々ならぬ情熱を注ぎ込みました。背景には無骨な金属製の足場(単管パイプ)と複雑に絡み合うケーブルを張り巡らせ、ライティングには温かみのある深紅と冷徹なシアンブルーのネオン管を交互に配置。この赤青ライティングによる寒暖の鮮烈なコントラストが画面の立体感を瞬時に削り出し、過酷な環境の中で際立つキャラクターの緊張感を力強く引き立ててくれます。
スタイリングのこだわりについて言えば、ウィッグには緻密なレイヤーカットを施し、毛先に施したグリーンのインナーカラーが照明を浴びて美しいグラデーションを描くよう計算しました。頭頂部に鎮座する幾何学的な赤白のヘッドピースは手作業で組み上げ、激しい動きでもブレないよう内側にコームを仕込んで強固に固定。衣装面では、リブ加工が施された黒のノースリーブクロップドトップスが抜群のフィット感を誇る一方、大きなアクションでも着崩れないよう裏側にシークレット固定を施しました。羽織った黒のエナメル光沢ジャケットは反射率が極めて高く、赤青のネオンをまるで鏡面のように美しく屈折させてくれます。パンツの地紋ジャガードや腰元のメタルバックルベルト、白のタクティカルストラップが細部の解像度を高め、足元に合わせた厚底のコンバットブーツが全体の重心をどっしりと安定させてくれました。
小道具のクナイや扇子には入念なウェザリング(汚し塗装)を施し、エッジに施したメタルシルバーのドライブラシが強光下でリアルな鉄の質感を放ちます。撮影中はしゃがみ込みや手すりに寄りかかる所作を成立させるため、足場の上を幾度となく昇り降りしました。アオリ(ローアングル)の構図はスラリとした脚の長さとクールで精悍なオーラを劇的に引き立ててくれる反面、体幹の筋力がシビアに要求されます。とりわけ3枚目の空中に身体を預けるポーズでは、腹筋と背筋を駆使して鉄パイプに身体をロックしつつ、上半身の脱力と眼差しの鋭利さを両立させる必要がありました。顔立ちに強い光が当たると白飛びしやすいため、カメラマンさんがライトの照射角をミリ単位で微調整し、私も顎の角度と視線の配り方を繊細に合わせ続けました。
事前の準備から撮影完了に至るまでかなりの時間を費やし、光の角度を追い込むだけでも数百回に及ぶテストを重ねました。しかし現像モニターに映し出された赤青ライティングが全身を鮮烈に切り裂く光景を目にした瞬間、積み重なった疲労は心地よい達成感へと一瞬で昇華されました。このインダストリアルな廃墟美が放つ唯一無二の熱量が、皆様の心に届くことを願っています。