イベントで『アークナイツ』のイネス コスプレを出して最も強く感じたのは、あの巨大な黒い角の存在感でした。頭囲のサイズ感にウィッグの厚みも加わり、角度が少しずれるだけで視界を遮られてしまうほどでした。しかもこのレザージャケットは通気性が低く熱がこもりやすいのですが、胸元までジッパーを引き上げると、佇まいの温度が一気に氷点下まで冷え込むような感覚を味わえます。イネスを演じる以上、眼差しの説得力は何より欠かせません。薄黄色のカラコンこそが魂であり、ダークブラウンのアイラインで目尻を長めに跳ね上げ、赤リップで引き締めることで、裏地の赤黒配色と美しく統一されたビジュアルを完成させました。撮影時に一番苦労したのは照明で、イベント会場の天井照明が乱反射していたため、自然な顔の陰影を作るべくわざわざ人通りの少ない一角を探してサイドから光を回しました。
「顔が小さすぎる」というネタは、写真を見た友人から「顔が細すぎて3つのホクロを描き足すスペースすら足りない」と言われたのがきっかけで、そのシュールなジョークをそのまま投稿に盛り込んでみました。実際のところ、このキャラクターを再現する上で最大の試練は顔の骨格感でした。素の輪郭はどちらかといえば丸みを帯びているため、キャラクターらしいシャープな陰影を出すべくエラ周りや頬骨の下に濃いめのシェーディングを施し、もともと小さめの輪郭をレンズ越しでさらに細身に見せました。頭の角を装着する際もバランス感覚が試され、小道具が重いためウィッグ内側のヘアピンだけで固定しており、頭を少し傾けるだけでぐらついてしまうため、終始わずかに顎を上げたクールな水平視線を保ち続けました。衣装で最も手間取ったのはファスナーの扱いで、周囲の衣装を手伝ったりしているうちに汗だくになってしまいました。会場は非常に騒がしく通行人も多かったため、ロールプレイに完全に没頭するのは至難の業でしたが、人の少ないスペースを見つけて集中力を高めました。
写真のレタッチではあえて寒色系のトーンを選び、レザージャケットのタフでハードな質感を強調しました。暗がりの中で黒いレザーに走るシルバーファスナーの反射が美しく映え、赤い襟元と強烈なコントラストを描いています。見た目さえ良ければ十分と思われがちですが、私は細部こそが成否を分けると信じています。例えば襟元のシルバーのスライダーにはほんのりラメを乗せて存在感を際立たせ、現場でのリアルな質感を高めました。今回挑戦したのはイネスだからこそ、あの不敵で冷徹、どこか冷笑的でミステリアスな空気感を掴むのは非常に繊細で、笑いすぎてしまうとキャラクターが崩れてしまいます。鋭く射抜くような眼差しを表現するため、アイメイクとウィッグの調整だけで1時間以上を費やしました。プロセス自体はハードでしたが、完成したイベント写真を目にした瞬間、すべての苦労が報われたと心から実感しました。