この墨形影踪のスタイリングは、メイクの決定から撮影完了まで約3週間かかりました。一番苦労したのは光沢のあるパテントレザージャケットではなく、襟元の青い立体花飾りの固定方法でした。シワにならず、襟をつぶさないよう何度も調整を重ねました。ウィッグは特注の耐熱ファイバーで毛量は十分ですが、ブリーチ後はパサつきやすいため、撮影前にヘアワックスで一束ずつ風になびく質感を整えました。現場で2台の扇風機をピンポイントで当てることで、3枚目の写真のような後ろへなびくロングヘアの躍動感を捉えることができました。
1枚目の写真の黒いカラスの小道具は、実は硬質発泡スチロールを削って着色したもので、とても軽量です。指先にしっかりと留まらせるため、裏側に極細の透明テグスを隠して補強し、後処理で消しています。2枚目と3枚目の金色の光るカードは、小型LEDを内蔵した小道具です。スイッチを入れると暖黄色の光が半透明の樹脂ケースから透けます。スタジオ内では実際の光は控えめに見えますが、カメラの色温度を下げて露出補正をかけることで、まるで魔法使いが符呪を凝縮させているかのようなビジュアルに仕上げました。
靴とジャケットはハイグロスレザー(高光沢革)を選びました。反射が硬くなりすぎないよう、ライティングの際はカメラマンに大型のソフトボックスを使ってもらい、地面にはあえて黒のマット吸光布を敷きました。これにより、足元の黒ストッキングとハイヒールの質感が均一に透け、環境の雑光によってテカりすぎないように調整しました。実は3枚目の片足つま先立ちのポーズは体幹がかなり試され、体を安定させてカードを指先に固定しつつ、膝の曲がりが硬くならないように気をつけました。20枚以上撮影してようやくこの一瞬を選び抜きました。足首は痛くなりましたが、完成した写真の引き伸ばされた脚のラインと流れるような裾のカーブを見たら、苦労した甲斐があったと感じます。
ディテール面では、手袋の縁に最初はスパンコールを使おうとしましたが、リアルさを追求して普通の白布の縫い付けに変更しました。袖口のグレーホワイトのプリントリボンは2層のシアーチュールを重ね縫いしたもので、歩く時に丸まることなく自然になびきます。小道具のカラスの翼には可動関節を取り付け、羽ばたきの角度を調整できるようにしました。1枚目の翼を広げた姿は、全体の構図に視覚的なアクセントをつけるためにあえて広げたものです。撮影は約2時間で、途中で何度もメイク直しをしましたが、白髪コスプレの銀白ウィッグと赤ピンク系のアイメイクの組み合わせは純粋なグレー背景に実によく映え、明暗のコントラストで輪郭が立体的に際立ちました。
この作品写真(正片)の雰囲気については、クールでどこか浮世離れした「師父」らしさを表現したかったため、カメラに対して無理に笑わず、少し目を伏せるか正面をまっすぐ見据えるようにしました。手元で光る符文と相まって、キャラクターの落ち着きと全場を支配する存在感を表現しています。衣装のウエストを絞ったカッティングは横からの角度で特に映え、3枚目のサイドポーズではウエストライン、バストライン、提のラインが最も美しく収まり、視覚的にとてもスマートに見えます。黒ストッキングの光沢感もライティング調整の肝で、白飛びして素肌のようにならないよう、かつシースルーの透け感とアンニュイさを残すため、サイド逆光と正面からの補光を組み合わせたライティングで現在の質感を作り上げました。
今回の撮影には装飾過多なセットはなく、シンプルなグレー背景にすることで、見る人の視線を衣装の質感とポージング(身体言語)に集中させることができました。これは写真撮影の原点に回帰するような試みでもあります。今回の墨形影踪の表現を通じて、キャラクターのスタイリングへのこだわりと撮影ディテールへの執着を感じていただければ幸いです。コスプレイヤーとして、キャラクターを平面から3次元空間に蘇らせるプロセス自体が、本当に最高に気持ちの良い体験です。