魔女の結界という空間のビジュアル表現そのものが、断片化されたシュルレアリスム溢れる切り絵(コラージュ)の美学に満ちているため、構図の初期プロットを練る段階で、コラージュアートこそが今回のまどほむ合わせの核となるべき表現手法だと直感しました。友人と企画を詰める中で長時間の議論を重ね、スタジオやロケ地の物理的な制約を完全に打ち破り、レタッチによる視覚の再構築のみによって、あの精神を苛むような圧倒的な重圧感と異形の不気味さを描き出すことを目指しました。
画面全体の視覚的中心にはクラシカルなブラウン管テレビを据え、画面の中には赤い蝶を宿した紫の瞳のクローズアップを配置。日常的な物品が異化されていく魔女の結界ならではの特性を際立たせるため、経年劣化した巨大な古時計の文字盤、宙に浮遊する手足、そして赤い靴底のハイヒールを履いた脚のアップを重ね合わせました。背景には高彩度のネオングリッチのカラーブロックを配し、ヴィンテージな時計や白黒テレビと鮮烈な寒暖色のコントラストを形成。上部から力なく垂れ下がる手や中央に鎮座するピンクゴールドの香水時計は、結界に支配され、絶え間なく覗き見られているかのような倒錯した違和感を表現しています。下部に配した巨大な黒い英字やシンボルは装飾でありながら、ポスターとしてのグラフィカルな張力を画面に宿す役割を果たしています。
制作プロセスはまさに過酷を極めました。中でも私を極限まで追い詰めたのは魔女文字の制作です。慌てて家を出たためペンタブレットを完全に忘れ、結界特有の歪でプリミティブな手作り感を追求するため、マウスを使ってソフトウェア上でアンカーポイントを一つひとつ引き、あの奇怪な文字群を気の遠くなる作業で手作業トレースしました。マウス描きならではの微かな揺らぎやジャギー感は、結果としてこの不条理で狂気じみたコラージュのテーマに奇跡的な親和性を見せてくれました。
後処理の合成にも膨大な時間を注ぎ込みました。テレビ画面の走査線ノイズ、古時計のテクスチャ、そしてキャラクターの衣装がちぐはぐに分離してしまわないよう、トーンマッピングやレイヤーの描画モードを無数に微調整。瞳の中の蝶は単独で切り抜いてパースを合わせ、セーラー服と黒いタイの質感にも焼き込みとシャープネスを幾重にも重ねることで、背後のアンティーク時計と自然に馴染ませました。一見無秩序に散らばる要素を一枚のキャンバスの中でいかに必然として成立させるかを突き詰め、最終的に影の落ちる位置と均一なガウスぼかしによるエッジ処理で空間の奥行きを構築しました。
今回のまどほむのコラージュ風作品は、構想から完成に至るまで極めて大胆な挑戦でした。画面を構成する要素は極めて多層的で複雑ですが、テレビの中の瞳と時計の輪郭を画面の「骨格」として明確に機能させ、鑑賞者の視線を自然に誘導する主従のメリハリを徹底しました。コスプレの作品作りとは、単にロケーションの中に人物を収める作業にとどまらず、実景では表現し得ない原作の抽象的な世界観を、コスプレのレタッチという芸術的加工を通じて具現化することにあると信じています。この一枚を妥協なく完成させられたことで長年の悲願を果たすことができました。残りのカットも一枚ずつ丁寧に魂を込めて仕上げていきたいと思います。