今回のアルクェイドの撮影は、事前の準備にかなりの時間を費やしました。『月姫』における王道の設定だからこそ、あの凛とした冷涼感と気品に満ちた佇まいを表現するのは決して容易ではありませんでした。衣装は白・青・金の3色切り替え仕立てで、襟元の青金ストライプのリボンタイにゴールドのブローチ、パフスリーブに青のロンググローブを合わせるなど、細部までこだわりが詰まっています。スカートの裾にあしらわれた金糸刺繍の質感を綺麗に見せるため、撮影前に念入りにアイロンをかけて整えました。裾を引くロングドレスだったので、足元を踏んでしまわないよう移動の際も細心の注意を払いました。
小道具のヴァイオリンは今回の撮影における最大の難所でした。私自身は楽器の経験が全くありませんでしたが、キャラクターとして演奏の所作が求められます。付け焼き刃に見えないよう、撮影の数日前にヴァイオリンが弾ける友人に頼み込んで基礎を徹底的に叩き込んでもらいました。楽器の構え方、左手の運指の位置、右手の弓の持ち方や力加減に至るまで、鏡の前で何度も練習を重ねました。本番の撮影では、弓とヴァイオリンの水平ラインを維持し続けるだけで腕がパンパンになるほどでした。それでもカメラマンさんが自然な瞬間を捉えるのが非常に巧みだったおかげで、完成写真は作為的なポーズ感を感じさせないナチュラルな仕上がりになりました。
スタジオの屋内セットの作り込みも素晴らしかったです。背景には透け感のある白いシフォンを巻き付けた白いブランコが据えられ、周囲には青と白を基調としたフラワーアレンジメントや金縁のミラーが贅沢に配置されていました。撮影時はレースカーテン越しに柔らかな自然光が差し込み、スカートやブランコの上に美しい木漏れ日のような陰影を落としてくれました。こうした光の条件は非常に貴重で、肌の質感が抜けるようにクリアに写り、撮って出しの段階で光と影のグラデーションが豊かだったため、レタッチはわずかな色調補正で済みました。
撮影中の感情表現のコントロールも大切にしました。「月の牢獄」を思わせる情緒に寄り添うため、普段の元気な自分を封印し、伏し目がちにするか遠くを見つめるような眼差しを意識して、余計な表情を作らないよう徹底しました。ブランコに腰掛けてヴァイオリンを構えたカットでは、弓が弦に触れた瞬間、現場の静まり返った空気も相まって、まるで遥かな故郷の記憶へと溶け込んでいくような感覚を覚えました。
今回の作品は構図もアングルも非常に見応えがあり、全身カットでは衣装の優美な広がりがしっかりと捉えられています。もし楽器を演奏するキャラクターをコスプレされる方がいれば、手元の仕草は事前に練習しておくことを強くおすすめします。アップの画角では手の形をごまかせないからです。また、ロングドレスはウエストラインの引き締めに気を配ると綺麗に見えます。重なりが多い衣装は着太りしやすいため、身体のラインにフィットするインナーを事前に調整しておくと良い仕上がりになります。