背景にそびえる湖州シェラトン(通称「便座ホテル」)はユニークな愛称で親しまれていますが、巨大な円形建築の前に立つと、紅白の衣装が驚くほど鮮やかに映えました。今回挑戦したのは『東方Project』の博麗霊夢(博麗霊夢コスプレ)です。衣装は立体的なレイヤーが際立つ紅白の巫女服に、所作に合わせて揺らめく白い長袖のアームカバーを合わせました。キャラクターの特徴を再現するため、ブラウンのツインテールに大きな赤いリボンをあしらい、足元には白いレースソックスをコーディネートした、個人的にもとてもお気に入りのスタイリングです。
この衣装を着て太湖のほとりを歩き回るのはかなりの体力を要しました。特にスカートの裾や大きな袂が湖面の湿気を吸うと重くなり、足取りがもたつきやすいためです。撮影当日の午後は光の加減が複雑だったため、直射日光による白飛びを避けて手すり沿いのポジションを選びました。順光で顔が影になり暗く見えてしまうのを防ぐため、レフ板を使って頬や目元に柔らかく光を補いました。湖面を渡る微風に合わせ、スカートの広がる角度を活かして何枚もシャッターを切りました。
青い鉄骨橋の下では光の明暗コントラストが非常に強く、陰影の境界線が美しい輪郭を描き出してくれました。後処理ではスカートの紅白の鮮やかさが環境光に濁らないよう、暗部のディテールを丁寧に調整しました。壁際の風化した壁画は、次元の壁を越えたような不思議な世界観を綺麗に演出してくれます。「少女祈祷中」という言葉は、まさに一世代のファンにとって『東方Project』という作品に抱く原風景のようなものです。今回の撮影では技巧に走りすぎず、紅白の配色が最も美しく映えるロケーションを探すことに注力しました。小道具には定番の大幣(御幣)を用意し、正面で構えても自然に垂らしても神聖な儀式感を漂わせてくれます。衣装の仕立てやレタッチには多くの労力を注ぎましたが、太湖の水辺の景観は東方作品のコスプレ撮影にこれ以上ないほどマッチしていました。
衣装にはややハリのある生地を選んだことで、動いたり屈んだりしても型崩れせず美しいシルエットを保てました。胸元の黄色いリボンには少し光沢のあるヴィンテージ調の布地を使用し、曇天や屋内でも深みのある落ち着いた発色を見せてくれます。霊夢に合わせた白ソックス(白いレースソックス)は生地がしっかりしていてズレ落ちにくく、黒のフラットシューズと合わせることで歩行時の脚のラインを綺麗に見せてくれます。手前の手すりに軽く手を添えてカメラを少し見下ろし気味に構えることで、ソックスと靴のプロポーションを絶妙に切り取ることができました。
背景の円形ホテルは非常にモダンな近代建築であり、背後で美しい幾何学構図を描くアングルを厳選しました。幻想的な東方の世界に生きる霊夢が、極めて近代的な都市空間に佇むというギャップそのものが大きな見どころです。青い橋の下では逆光を活かしつつ、画面が潰れないようクリップオンストロボでフロントに光を補い、サイド逆光で袖口や髪のエッジを美しく縁取りました。時の流れを感じさせる色褪せた壁画は写真にリアルな生活感を添え、絶妙な調和を生み出してくれました。
「少女祈祷中」は霊夢の代名詞であると同時に、東方シリーズを象徴する屈指の名曲でもあります。普段からこの言葉の持つ情緒をどう表現するかを考えていましたが、橋の下に立ち水面の広がりを仰ぎ見るアングルを選んだことで、作品へのささやかなオマージュを捧げることができました。白い大幣を手にし、紅白の巫女服をまとった立ち姿は、キャラクターの持つオーラを完璧に引き立ててくれました。今回のレタッチでは過度な肌補正を避け、素肌のリアルな質感を大切に残しつつ、紅白の彩度を心地よく整えました。光と影が織りなすこの太湖畔の写真群は、今年撮影したコスプレ作品の中でも屈指の完成度になったと実感しています。