本日お届けするポートレートのテーマは、ずばりオフィスで働く社畜の日常。特定の二次元IPではなく、リアルな働く者の実録を追求しました。青白の細ストライプ半袖シャツにダークネイビーのプリーツスカートを合わせ、シアーな黒ストッキングに大ぶりの黒縁メガネ、仕上げに首から下げた青い社員証ストラップ。このコーディネートの説得力は、働く大人なら誰もが頷いてくれるはずです。ビジネスポートレートとしてのリアリティをさらに高めるため、リップはあえてツヤを抑えたマットに仕上げ、スカートのウエスト位置もスタイルが最も美しく見えるバランスに調整しました。
最初のロケーションには道端の階段を選定。午後3時から4時頃の柔らかな自然光が木々の隙間から差し込み、美しい木漏れ日の陰影を描き出してくれました。手にした野菜サラダは本物の小道具で、レタスを口に運んだり箸を噛んだりする瞬間をスナップするため、何度も咀嚼を繰り返しました。視線には深い虚無感とやるせなさ、そして「これだけかよ…」という静かな怒りを宿らせるのがポイントです。道行く通行人の視線を感じながら笑いを堪えてポーカーフェイスを貫くのは、まさに演技力の真剣勝負でした。硬い石段に腰を下ろし、サラダの容器を支えながら黒ストッキング姿で蒸し暑さの中で姿勢をキープし続けたため、撮影を終える頃には脚の筋肉が心地よい悲鳴を上げていました。
2つ目のシーンは街角のオープンカフェ席へと移動。テーブルの上には開いたままのノートPC、黄桃ジュース、炭酸水、ポテトチップス、ブルーベリーにライムと、リアルな小道具を贅沢に散りばめました。理不尽な案件に振り回されながら無理やり命を繋ぐ限界社会人の佇まいを表現すべく、両手で頭を抱えたり、頬杖をついて画面を虚ろに見つめたり、背もたれに寄りかかって天を仰いだりと多彩な表情を試みました。頭を抱えるカットでは、カメラマンさんから「明日締め切りの企画書が3本あるのに1文字も書けていない絶望感をイメージして」と指示され、瞬時に感情がリンクしました。スナック類もすべて本物で、食べる時間はなかったものの、その彩りが生活感あふれる温かみを添えてくれました。なお、黒いノートPCは私物ではなくログインパスワードすら知らなかったため、終始ブラインドタッチで猛烈にタイピングするフリを演じ切りました。
今回の機材はGFX100SにGF 110mm、シグマ40mm F1.4、85mm F1.4という万全の布陣。中判センサーが描き出す解像力は息をのむほどで、シャツの繊細なストライプの織り目や黒ストッキングの上質なテクスチャ、さらにはまつげの一本や髪の毛のハイライトに至るまで余すところなく克明に描写してくれました。大口径レンズの豊かなボケ味が背景の街路樹や街並みを滑らかに溶かし、被写体をドラマティックに浮かび上がらせ、俯瞰のアングルでも歪みのない完璧な描写力を発揮してくれました。
普段SNSでは「社畜」「資本主義の駒」などと自虐しがちですが、そうした日常のリアリティをビジュアル表現へと昇華させてみると、不思議と愛おしく面白い創作体験になります。特別なウィッグや大掛かりな武器小道具を必要としない日常系眼鏡っ娘ポートレートだからこそ、等身大の空気が色濃く宿ります。現実のオフィスではこれほど大袈裟にキーボードを叩くことはないにしても、レンズの前の私は間違いなくカフェでノルマと格闘するリアルな労働者そのものでした。完璧なポーズを取り繕う必要もなく、疲労も苛立ちも、青汁ならぬ草を食べながらちゃぶ台をひっくり返したくなる衝動もすべてさらけ出せる生々しさこそが、この作品の最大の魅力です。働く毎日はハードですが、その過酷さをカメラの前でユーモアに変えて笑い飛ばすこともまた、大人ならではの素敵なセルフセラピーなのだと感じています。