今回の『鳴潮』フローヴァによるシンゲツコの作品は、スタイリングから空間演出に至るまで並々ならぬこだわりを注ぎ込みました。衣装は黒・白・赤の3色を基調とし、艶やかな光沢素材に金色の星型オーナメントとブルーの宝石パーツを散りばめ、肩や袖口をセパレート仕様にすることで美しいドレープ感を持たせました。シンゲツコの設定を忠実に再現するため、頭頂部には毛先をダークトーンとグリーンのグラデーションで染めた巨大なファーの獣耳を装着。アッシュグリーンのぱっつん前髪ロングヘアに金色の三日月のかんざしと赤い花飾りを合わせ、鮮烈な色彩のコントラストを生み出しました。メイクでは赤のカラコンを装用して目尻を長めに引き、右目の下に赤い雫のポイントメイクを施し、鮮やかな赤リップと合わせて、凛とした冷涼感の中に気だるげな色香を漂わせました。
撮影セットは風情あふれる伝統的な中庭をイメージして設営しました。毛筆の書が躍る宣紙を掛けた木製屏風を背景に配し、周囲に紅葉、桜、白梅、青竹を贅沢にあしらいました。紙提灯から零れ落ちる温もりある黄色の光が、黒塗りの木製家具と美しい陰影のコントラストを描き出します。小道具には赤黒の扇子、囲碁の碁盤と碁笥、そして赤い油紙傘を用意しました。これらのプロップを活用しながら、あぐら、扇を構える仕草、碁石を打つ所作、斜めに身をもたせかける姿勢など多彩なポージングを試し、身体の動きを極力自然にしなやかに見せるよう工夫しました。白いモコモコの敷物に素足で触れる演出も、情緒豊かなニュアンスを引き出す表現の一つとなりました。
今回の機材にはソニーα1とシグマ 28-105mm F2.8レンズを採用しました。重量995gと手にずっしりとした手応えがあるものの、大口径の万能ズームレンズとして高効率な創作活動を支えるまさに万能の相棒でした。フィルター径82mmでフィルターワークも極めてスムーズです。何より驚かされたのはオートフォーカスの性能で、HLA(リニアモーター)による駆動は極めて高速かつ静粛でした。スタジオ内は紙提灯の柔らかな明かりが主で光量が限られていましたが、光が回るポイントでは瞬時に合焦し、薄暗いシーンでも被写体への追従が非常に素早いため、ポーズを静止して待つ負担を大幅に軽減してくれました。
描写力に関しても、シグマ 28-105mmは日常的に多用する焦点距離全域において極めて高い光学性能を発揮してくれました。特に驚嘆したのは70〜105mmの中望遠域で、画質の低下が見られないどころか一段と解像感が増す印象でした。細部の質感まで克明に描写したい私にとって、まさに理想的なレンズです。目元のメイクや髪飾りのディテールに迫るクローズアップから、美しいボケ味を活かしたバストアップまで、見事に応えてくれました。α1の高画素と相まって、拡大しても細部までシャープな解像感を保っています。紅葉を大胆に前ボケとして配したカットでは、ピント面からとろけるような滑らかなボケ味が得られ、主役の存在感を美しく際立たせてくれました。
光と影、小道具、そしてレンズの調和が完璧に噛み合い、撮影は終始スムーズに進行しました。ファンタジーの要素とクラシカルな東洋美を融合させたこのスタイルがとても気に入っており、シンゲツコの世界観が表現の可能性を大いに広げてくれたおかげで、重厚な質感に満ちた納得のいく作品を残すことができました。