今回の撮影テーマは「定義されない海」。セーラー服のJK制服に手作りの白黒の翼の小道具を合わせ、海辺でどこか清冷で情緒的な二次元コスプレの雰囲気を収めるというコンセプトからスタートしました。海のロケーションに溶け込ませるため、翼の小道具には定番の純白の羽毛を使わず、発泡素材とフェルト布を切り抜いて張り合わせ、チャコールグレーや黒から白へと移ろう美しいグラデーションを表現しました。約300枚以上もの羽を丁寧に切り出し、一枚一枚貼り重ねつつ、海風への耐性も綿密に計算。海辺の風は非常に強く、これほど大きな翼は凧のように煽られてしまうため、骨組みの内部に硬質な針金を仕込み、ショルダーストラップも背中でクロスする形状に改良することで、ジャンプや大きな所作を行っても外れたり変形したりしないよう耐久性を高めました。
撮影当日は分厚い雲が広がる曇り空で、空全体がまるで巨大な天然のソフトボックスのようでした。こうした天候はJK制服や大型の小道具の撮影に非常に適しており、強い直射日光がないため顔に濃い影が落ちる心配もなく、大掛かりなライティングの手間を省くことができます。ただし曇天の光はフラットになりやすいため、カメラマンさんはカメラ内でホワイトバランスを青寄りの寒色系に設定し、海辺の写真に込められた情緒的な空気感をより一層深めてくれました。ロケーションと一体化するため、足元には何も履かず素足で海水へと足を踏み入れました。初秋の海水はかなり冷たく、最初は思わず身震いしましたが、歩みを進めるうちに次第に慣れていきました。砂浜には薄っすらと海水が膜を張って鏡のように広がり、特に全身の立ち姿のカットでは、水面に映るリフレクションが見事なシンメトリー構図を描き出してくれました。これは当日最大の嬉しいサプライズで、レタッチで余計な加工を施す必要がないほど完璧な美しさでした。
撮影において最大の難関となったのは、やはり絶え間なく吹きつける強い海風でした。風が正面から煽り立てるため、前髪やロングヘアが顔に張り付きやすく、自然な所作を切り取るために立ち止まってポーズを決めるのではなく、つま先立ちをしたり、ターンをしたり、軽く跳んだりと動き続けました。片足立ちで両腕を広げたカットは、まさにふわりと宙に浮いた一瞬を捉えたもので、体幹を強く引き締め、脚のコントロールを保ち続けなければバランスを崩して転倒してしまうほどでした。もう一枚の、片手を高く掲げて顎を上げ身体を斜めに向けたカットも、風の流れに身を任せて手足を伸ばし、翼の小道具の優美なシルエットを大きく広げることを意識しました。振り返る眼差しにはストーリー性を宿らせ、レンズを外す時は遥かな水平線を見つめ、カメラを見つめる時は柔らかな視線を注ぎました。
スタイリングに関しては、ベーシックな白の半袖セーラー服に淡い紫のリボン、そしてダークトーンのプリーツスカートをセレクト。JK制服のプリーツは向かい風を受けることで美しい躍動感を生み出し、スカートの裾と翼の小道具のレイヤードが画面の中で豊かな立体感を織りなします。レンズには開放F値の明るい単焦点レンズを使用し、上半身の振り返り特写では背景に寄せる波を柔らかくぼかし、翼の緻密なテクスチャと被写体の繊細な表情を際立たせました。胸の内に秘めた想いを海へ放ち、海は変わらずそこに佇み続ける。この特別な二次元コスプレの装いで海辺の写真として美しい記憶を刻み、小道具の制作から撮影依頼に至るまで、すべての工程が過酷でありながらも心満たされるかけがえのない時間となりました。