伊予下灘の潮風は、今でも記憶の中に鮮明に残っている気がします。去年の夏、カメラマンの@砂糖satoさんと一緒に東方航空のローカル路線に乗り、乗り継ぎを繰り返してこの海辺の無人駅へとやって来ました。上海から松山へ飛び、そこから各駅停車の普通列車に揺られるという道のりは決して楽ではありませんでしたが、ホームに降り立ちあの海を目にした瞬間、すべての苦労が報われました。
ここの青空と海に合わせて選んだのは、王道の白×紺セーラー服です。膝丈の白いソックスにブラウンのローファーを合わせ、重みのあるスクールバッグを手にしてホームに立つと、まるで時間の流れがゆっくりになったかのようでした。リボンは淡いピンクを選び、白と青の世界の中で程よいアクセントになって単調さを消してくれました。
撮影当日は天候にも恵まれ、久しぶりにこれほど澄み切った青空に出会えました。海面はキラキラと輝き、遠くの島々がおぼろげに浮かび上がっています。この抜け感を余すところなく捉えるため、カメラマンは今回Z6IIIにタムロン35-150mm F2-2.8 Di III VXDを組み合わせて臨んでくれました。
この焦点距離は本当にこのロケーションにぴったりでした。35mm側では駅の木造の屋根や線路といった周囲の環境を取り込み、下灘駅ならではのレトロな風情を表現できます。そして望遠側にズームしてF2.8の開放を活かせば、背景の海をすっきりと圧縮し、被写体を際立たせることができます。レンズ自体は確かに少し重いものの、視点を頻繁に変えたい屋外の現場においてレンズ交換の手間が省け、スナップ感覚でスムーズにシャッターが切れました。
ホームのベンチや電柱のそば、横断歩道など様々な場所でシャッターを切りました。青い木製ベンチに腰を下ろすと、真上からの陽光を受け、白ストッキングとローファーの質感が繊細に浮かび上がります。潮風が吹いて髪が乱れ、手で髪を整えるふとした瞬間も綺麗に切り取られていました。手すりに足を掛けたり、何気なく振り返ってカメラを見つめたりする、飾らない自然体の姿こそが一番絵になります。
駅舎内の木製ベンチや壁一面に貼られた時刻表もとても味があり、室内でも何パターンか撮影しました。駅の外には小さな郵便ポストや鉢植えが置かれ、遠くに見える白いバスと相まって、画面全体が夏の日本風写真らしい空気に包まれていました。Z6IIIのカラーサイエンスは高彩度なシチュエーションでも非常に安定しており、撮って出しの段階で十分な質感を備えていました。
ロケ撮影では光が強すぎたり天候が崩れたりするのが一番の悩みどころですが、今回は下灘の潮風、澄んだ青空、そして年季の入ったホームと、理想的な要素がすべて揃っていました。日差しが一番強い時間帯に撮影したため少し眩しそうな表情になりましたが、その軽く目を細めたアンニュイな表情がかえって夏の気だるげな雰囲気を醸し出してくれました。コンクリートホームの照り返しも強烈でしたが、撮影の妨げにはなりませんでした。駅はとても静かで、聞こえてくるのは波の音と時折通り過ぎる電車の音だけ。撮影中の心も自然と穏やかになっていきました。
写真を整理していると、空気までもが青く染まっているように感じられます。あの夏はもう過ぎ去ってしまいましたが、写真を見返すたび、制服を着て駅の中を楽しそうに行き来していた自分の姿が鮮やかによみがえってきます。