今回の撮影コンセプトはとてもシンプルで、明確な動物の要素を取り入れた擬人化作品を撮りたいという思いからスタートしました。猫娘擬人化の設定に合わせるため、胸元に「睡眠不足」とプリントされた黒のオーバーサイズTシャツを選び、同系色のシアーなパンティストッキングを合わせることで全体のトーンを落ち着かせ、視覚的にもリラックスした脱力感を演出しました。頭上の猫耳と背中の尻尾はこのスタイリングの魂とも言えるパーツで、装着してその場に丸まるだけで、無理に演技をしなくても自然とキャラクターの空気感が立ち上ってきます。合わせた黒ストッキングは白いスタジオの中で鮮やかな白黒のコントラストを生み出し、あぐらをかいたり足を横に伸ばしたりと少し角度を変えるだけで、脚のラインを綺麗に見せつつ画面全体の階調を豊かにしてくれました。
撮影場所には余計な反射のない白ホリスタジオを選びました。白ホリ撮影の最大の利点は光が極めてクリーンで環境の雑光に邪魔されない点にあり、色調補正もしやすく、透明感に満ちたスイートポートレートの質感を容易に引き出せます。しかし同時に、ポーズのバリエーションが少ないと空間が間延びし、まるで製品カタログのように平坦に見えてしまうという難点もあります。そこで画面を賑やかに彩るため、カップ麺やお菓子をたくさん用意し、硬いスタジオ撮影ではなくリアルな宅コス日常スナップのような親しみやすい世界観を作りました。色とりどりのカップ麺のパッケージや青いスナック菓子の袋が、モノトーンを基調とした空間の中で高彩度な差し色となり、単調さを防いでくれています。
アクション面では複雑な演出を避け、猫の習性を意識した所作を取り入れました。両手で小さな拳を作って頬の横に添える猫パンチの仕草や、片手を前に伸ばして何かを掴もうとする動き、大きく伸びをして両腕を掲げるポーズなどです。シンプルに見える動作ですが、可動域の加減が重要で、小さすぎると窮屈に見え、広げすぎると気だるげな世界観が損なわれてしまいます。肩の力を抜き、重心を腰や膝に預けることで、ふにゃんとした柔らかい脱力感を表現しました。特に正座や前傾姿勢のカットは、カメラのパースと相まって見る人との距離感をぐっと縮める効果を生み出しています。
メイクにも少し工夫を凝らしました。濃いアイラインを避け、目元全体に赤いアイシャドウをふんわりとぼかしてチークと繋げることで、まるで寝起きのようなほんのり上気した表情を作り出し、胸元の「睡眠不足」という文字に自然にリンクさせました。メガネを掛けたのは現場での思いつきでしたが、少しインドアでオタクっぽいギャップが加わり、良いアクセントになりました。
テーマが明確だったためポージングに迷うこともなく、撮影は終始スムーズに進みました。事前準備としてお菓子を散りばめたポートレート写真をたくさんリサーチし、小道具を用いた画面構成の仕方を学んだことが現場でとても役立ちました。この手のスタイルに挑戦する際は、小道具を惜しみなく用意することをおすすめします。散らかっているように見えても、計算された生活感こそが写真にリアルな温度を宿してくれます。また、カメラに対する体の角度を工夫し、黒ストッキングの引き締まったラインで視線を誘導しながらも、決して気取らず自然体で伸びやかに佇むことが大切です。のんびりとした気だるさと小動物のような愛らしさを綺麗に切り取ることができ、とても納得のいく作品に仕上がりました。