2026年7月4日、郎園Stationの屋上にて「恋は雨上がりのように」をテーマにしたポートレート撮影を敢行しました。夏の屋上は夜になっても活気に満ちており、多くの撮影チームが場所を確保してシャッターを切っていました。今回のテーマに寄り添い、いつもの元気いっぱいに跳ね回るスタイルをあえて封印し、より内省的で叙情的なムード系ポートレートの表現に挑戦しました。
撮影機材には、久しぶりにFUJIFILM X-H2を持ち出し、XF23mm F1.4 R LM WRとXF56mm F1.2 R WRの2本の単焦点レンズをスタンバイ。夜間の暗所において、開放F値の明るさがもたらす豊富な光量と滑らかなボケ味はまさに圧巻でした。23mmの広角域は屋上の環境全体を雄弁に物語り、遠くにそびえる摩天楼や街灯を美しく構図に収め、一方の56mmは中望遠ならではの圧縮効果で背景の玉ボケを濃密に凝縮させ、被写体の感情の機微を鮮烈に際立たせてくれました。
事前の仕込みとして、大量の透明なビニール傘を調達しました。一部は手元に差し、残りは濡れた床一面に無造作に配置。透明傘へのライティングは極めてシビアで、光源の角度がわずかにズレるだけで傘面の反射やハイライトの表情が一変します。ビニールを伝う雨粒がライトを浴びて繊細にきらめき、遠くのテールランプや街灯と相まって、温かな光と冷涼な闇が交錯するドラマチックな光景を描き出してくれました。
衣装には王道のセーラー服をセレクトし、白のオーバーイヤーヘッドホンをコーディネート。当初は頭に装着する予定でしたが、首元に無造作にかけることで日常のリアリティとこなれたJK制服の空気感をプラス。雨が降っていないのにどうやって撮ったのかとよく聞かれますが、霧吹きを準備して傘面や地面にリアルな水滴のテクスチャを丹念に作り込みました。水滴がビニールを滑り落ちる刹那を捉えるため、吹き抜ける夜風の中で傘を掲げたまま長時間立ち尽くし、何度も姿勢を整え直しました。
情緒的なポートレートは視線のコントロールこそが生命線です。過度な笑顔は作らず、静かに佇んだり、物思いに沈むように遥か彼方を見つめたりする引き算の表情を意識。雨の夜の雰囲気は決して無理に演じるものではなく、しっとりとした濡れ感と傘を叩く水滴の音に身を委ねるだけで、自然と静謐な心境が立ち上がってきます。撮影後は衣装が少し湿り気を帯びてしまいましたが、モニター越しに確認した撮って出しの光と影の美しさに、すべての努力が報われたと実感しました。過酷な夜間ロケにもかかわらず、複雑な光を的確に捉え繊細なニュアンスを拾い上げてくださったカメラマンさんの粘り強いリードに、心から感謝しています。