今日の一連の写真で表現したかったのは、二日酔いの後の、夢と現の間を彷徨うような少し退廃的で疲弊した空気感です。テーブルの上のマーテルの酒瓶とウイスキーグラスは意図して用意した小道具で、リアルさを高めるため、光が当たった時に琥珀色の屈折が美しく出るダイヤカットのグラスを撮影前に長い時間をかけて探しました。白シャツの襟元を少し崩し、袖をラフに捲り、指先に煙草を挟む。複雑なポージングをわざとらしく作る必要はなく、ただテーブルに突っ伏して、周囲のすべてを煩わしく思うような脱力感を出すだけで十分でした。撮影の合間もグラスの液体の光の反射をじっと見つめ、眼差しと琥珀色のハレーションを呼応させることで、単なるポーズ付けではなく、本当にこの酒の場に溶け込んでいるかのような佇まいを目指しました。
メイクに関しては、今回は目元の陰影作りに重点を置きました。前夜に深酒をして眠れていない雰囲気に寄せるため、アイシャドウには寒色寄りのグレーブラウンを広めにベースとして塗り、目尻に赤茶系のグラデーションを薄く足しました。グリーンのカラコンと合わさることで、カメラを見つめた際にどこか焦点の合わない儚さを演出しています。ウィッグは入念にカットを施し、前髪にラフな毛束感を残して片目を覆うように整えることで、神秘性を添えつつフェイスラインに立体感を持たせました。ベースメイクは過度な陶器肌に仕上げず、素肌の自然なキメを残すことで、寄りのカットでも深みが出るようにしています。ライティングはサイドからの逆光を効かせ、背景を深く沈ませて横顔とグラスだけに一筋の光を当てることで、明暗の強いコントラストを作り出しました。この照明設計は抑圧された情緒を孕んだ画面作りに非常に適していました。
今回の撮影には特別な演出があり、画面の右側にパートナーの手と黒いコートが写り込んでいます。これが投稿文にある「寄り添うことは静かな告白」という一節です。ツーショットのカットでは私が背景に回る場面が多かったものの、こうした端に寄せる構図こそがかえって物語性を深く醸し出してくれます。派手な掛け合いはなく、ただ静かに同じ空間に身を置く。一方が上着を手にして立ち去ろうとし、もう一方が酒席でぼんやりと物思いに耽る。その絶妙な距離感と引っ張り合いがとても心地よいものでした。手元の出演を引き受けてくれた百夜真白さんに心から感謝します。手の仕草ひとつだけで、成熟した落ち着きのある雰囲気を完璧に引き立ててくれました。ツーショット写真はまだ現像前ですが、ソロの写真はすでに息をのむ仕上がりです。現場では手の動きの大きさや配置について綿密に話し合い、言葉のない庇護感を伴う寄り添いを表現できるように工夫しました。
アキというキャラクター自体が重層的で抑圧された内面を持っているため、表現にあたっては余計な表情を削ぎ落とすよう心掛けました。終始視線は虚空を漂わせ、指先をグラスの縁にそっと添えたり、煙草をつまんでぼんやり佇んだりしました。こうした静的な情緒を捉える写真ではコスプレイヤーの集中力と世界観への没入が試されます。レンズ交換の合間もポーズを崩さず静止し続けなければならず、わずかな緩みが画面の空気を損なってしまうからです。黒い光沢テーブルに白シャツで突っ伏すのは身体が冷えましたが、仕上がった写真を見ればすべての苦労が報われたと実感します。未レタッチのツーショットにおける二人の距離感も非常に魅力的で、完成後にこの二次元の奇妙な化学反応を皆様にお届けできるのが楽しみです。撮影自体は数時間という短いものでしたが、あの静まり返った空気の中で、キャラクターが抱える孤独と疲労を束の間追体験できたような気がします。