カメラマンと相談した結果、今回はすべてのコスプレレタッチを自分で担当することに挑戦しました。撮って出しのデータが届いてからは、光と影、そしてパーティクルエフェクトの処理のために連日深夜まで作業に追われました。カメラマンさんがシャッターを切る専門でレタッチをしないスタイルだったため、自分自身がオールマイティなレタッチャーになるしかありませんでした。全体の編集工程は非常に複雑で、まずは被写体の切り抜きとパース調整、続いて浮かぶ燭台や鹿の角の配置、最後に炎のパーティクルやロウソクの火のエフェクトの合成を行いました。
スタジオの元の環境光はかなり乱れていたため、「燭火に誓い、この剣をもってお前の前途を照らさん」という壮大な世界観を演出すべく、後処理で環境光を暗く落とし、人物の顔や白ストッキングのハイライト、赤いドレスのシャドウ部を個別に持ち上げることで、仄暗くも神聖な雰囲気に仕上げました。撮影時もスカートの翻る躍動感を出すため、相方と一緒に何度も裾を振る動作を繰り返し、あおり構図でも何テイクも重ねて、最終的に最も構図のバランスが良い1枚を選び出しました。
この衣装自体も着用が大変で、胸元のストラップが強く締め付けられ、白い長袖コートと黒のコルセットの質感の差が非常に大きかったため、レタッチ時にはレザーの硬質さと布地のシワ感を丁寧に描き分け、平坦になりすぎないよう注意を払いました。さらにふくらはぎのストッキングに生じる環境光のテカリを抑えて自然な質感を保つため、ニュートラルグレーのレイヤーを使って少しずつ反射を整えました。また浮遊するロウソクの合成ではあえて暖色系に色調を合わせ、エッジの馴染みをリアルに見せつつ、ロウソクの火のエフェクトのモーションブラーを残しました。全工程のレタッチを自分で手掛ける最大のメリットは、画面全体の空気感を完全にコントロールできる点にあります。作業は非常に骨が折れましたが、脳内のイメージ通りの仕上がりになった時の達成感は格別でした。この作品が、皆さんの期待する厳かかつ神秘的な世界観を伝えられていれば幸いです。